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□瑠璃色シニリズム
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瑠璃色シニリズム
「夕飯、オムライスにせえ」
「はぁ?」
真子の恋人として、真子のアパートの真子の部屋に来て、それで、久々に会った私への第一声に気の抜けた声を出してしまった。
そんな奥さんみたいな真似をしていいのか分からない。
真子の部屋の台所を使って、本当に私みたいなのが料理をしていいのだろうか。
私、みたいなのが。
「…オムライスな気分やねん」
「私が作ると卵破けるかも」
「ええて」
「もう…」
冷蔵庫にはびっくりするほど何もなくて、私はため息。
これでオムライスを作れなんて無理もいいとこだ。
真子を無理やり立たせて買い物に連れ出す。
「オムライスな気分なら、ちゃんと卵用意してよ」
「しゃあないわ、急に作ってもらいたくなんねんて」
「…寒ぅ」
「アホやなぁ、手袋せぇへんから」
ほれ、と出された手をおずおず掴めば、ぐいと引き寄せられてジャケットのポケットに突っ込まれる。
けっこう王道にクサい行為だけど、たまらなく嬉しくなってしまった。
ポケットの中で真子の指が、小さくもぞもぞ動いていた。
「真子」
「なんやねん」
「オムライス、頑張るね」
「…そーしてや」
スーパーで、籠も持ってもらって、手を繋いだまま買い物をする。
玉ねぎにピーマンにと乱雑に籠へ入れていくのだけど、真子は重そうな素振りを見せない。
そういうところは、元でも隊長さん、ぽくて、嫌いじゃない。
腕っぷしがよくて、嫌いじゃない。
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