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□引き金は君のものだ
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引き金は君のものだ








「殺す気、なんやろなまえちゃん」

「…だったら、」

「ごめんな、ボク、欲しいものはちゃんと手に入れたい主義やねん」



切っ先は、喉元。

この真っ白な無限砂漠のいわば中枢で、糸のように細めた目を私はひたすらに睨んだ。

市丸隊長。

市丸、元、隊長。

反逆者の烙印を捺されたこの人は、あろうことか私をここまで連れてきた。

私は反逆者ではないのに。



「どういうおつもりで」

「だから、手に入れたかってん」

「…答えになってません」

「なっとるよ、ちゃあんと」



私は、三番隊の平隊士だ。

戦力になんかなれないし、尸魂界にとっても痛手でもない。

むしろ私みたいなのが来たら不便この上ないだろうに。



(それとも、盾にでもする気なのだろうか)



恐ろしい考えに、身震いする。

私は盾にされたところで一度きりしか使えない捨て鉢であるには違いないのだから。

切っ先が震える。

市丸隊長は、私をのんびり見るだけだった。



「だってボクだけこっち来るなんて寂しいやんか」

「隊長…」

「なまえちゃんも連れてなら寂しないやろ」

「答えになってません…隊長」

「なっとるよ」



刃の先が、震える。

もし私が卍解が出来るほどに強かったなら、何かが変わっていたのだろうか。

市丸隊長は動じない。

以前と同じようにのんびりと私を見ている。

以前と同じように私の何かを揺るがせる。

隊長、と漏らしかけた言葉の端が、喉に引っかかって出てこない。



「なまえちゃん」

「っ…」

「知っとるよ、ボク」



何を、とは言えなかった。

私がひた隠しにしてきたその事実を、市丸隊長は確かに知っているような気さえしてしまったのだから。








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