**Hide and Seek** sungyeol

□紛失
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*You side

時刻は午後7時

昼間あんなに賑わっていた店内もこの時間になると客足も減ってだいぶ落ち着いてきた。

日本と違って韓国はどのお店もたいてい夜遅くまで営業している。

お客様の数も減って少し退屈になってきたので、私は仲の良いスタッフのソヨンちゃんとお喋りに花を咲かせていた。
ソヨンちゃんは私と同じ年で、大学に通いながらアルバイトとしてお店で働いている。

「今日も帰ってから課題やらないとだよー。レポートやだ…ねたいー!」
「学生さんはやっぱり大変そうだね。でも学校ちょっと羨ましいな。楽しそう!」
「えぇー授業は眠いし楽しくないよ?宿題もいーっぱい出るし。」

「すいませーん!」
そこまで話したところでお客様に呼ばれた。
「はい!あ、あたし行くね。名無しさんちゃんここにいていいよ。」
「ありがとー。」
ソヨンちゃんはそう言ってお客様の方へぱたぱたと駆けていった。

「宿題…宿題ねー。あ、そういえば!」

"宿題"の言葉で昼間、日本人のお客様に渡された紙のことを思い出した。
たしかポケットに・・・


ゴソ


…え?


ゴソゴソ


あれっ!?


「え!?ない!!」

突然声をあげた私にびっくりしてソヨンちゃんもお客様もこっちを見た。

「あ・・・ごめんなさい。」

恥ずかしくてペコッと頭を下げ、視線をポケットに戻す。

…ない…ない!

何回ポケットを漁っても中はからっぽだった。

落っことしたのかな?

店内を歩き回って床の隅々まで視線を走らせるが何も落ちていない。

あ、外で落としたかも!

お店の前の道に出て確認するが、それらしきものは落ちていなかった。

うそぉ…

「なくしちゃった…宿題だったのに。」

また絶対来ますと言ってくれた2人の笑顔を思い出して悲しくなると同時に、自分のドジっぷりにため息が出た。

はあ

私はがっくりと肩を落とし、とぼとぼ店内へ戻った。



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