第一話「初出勤」
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「こんな日に限って何で寝坊しちゃったの〜〜!」



カツカツとヒールの音を響かせながら一人の女が走る。


4月の初旬。
まだ桜の蕾が芽吹きはじめた春の日。
真新しいスーツに、磨きあげられた靴。



今日はそう――
社会人の新しい幕開けとなる一日、

「入社式」である。




定期を改札機にタッチをしてホームまで走る走る。


これを逃せば確実に初日から遅刻=最悪な第一印象になりかねない。




ホームへ降りると丁度電車が入ってきたところであった。


杏は間一髪で電車に乗ることができたのだった。



「(うぅ…よかった…乗れた)」



はぁはぁと肩を揺らし、呼吸を整える。


朝の通勤電車は勿論すし詰め状態。
これから毎朝は満員電車か…と思うと少し憂鬱になる。


押された拍子に男の人にぶつかってしまった。



「あ…ごめんなさい…」

「いいえ、君こそ大丈夫?」


見上げると、青葉色の瞳が印象的な美形な男性が、微笑んでいた。



「(わ…素敵な人……//)」



私は照れてしまい、会釈だけを返し、窓を見た。




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