君と渡り廊下と。
□君と渡り廊下と。
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3年生の卒業式の日。
もう2年生が終わろうとしていることに呆然としていた私は、2階の渡り廊下のバルコニーに人が居ることに気が付かなかった。
「詩〜乃っ。ここで何やってんの?」
「あ、雪(ゆき)。」
ぽん、と肩に置かれた手は、雪のものだった。
雪は高校に入ってから出来た友達で、今じゃ親友と呼べるほど仲が良い(と私は思う)。
「なに?好きな人でも出来た?」
と言ってにやにや笑う雪に、私は雪の頭を小突いた。
「そんなん全然違くて、もう2年終わりだな〜って思ってたの!」
「あ〜、なるほど。黄昏れてた訳ね。」
「なんで嫌味みたいな言い方するかなぁ〜」
と言って苦笑する私に、雪はえへへと笑ってピースした。
褒めてないですよ、雪サン。
「あれ?あそこ人居んじゃん。」
雪が指さした先は、渡り廊下のバルコニーだった。
その人は手に卒業証書を持って柵に寄り掛かり、遠くを見つめていた。
「ひゃー。今まで気付かなかった。卒業証書持ってるってことは3年?」
「だろうねぇ。…てことは、え?!もう卒業式終わってるの?!」
「とっくに終わってるんじゃない?」
「やばっ、あたし委員の仕事あるんだった!ごめん詩乃、先行くね!」
雪はそうとだけ伝えると、走って行ってしまった。
渡り廊下に取り残された私は、その人を眺めていた。
というか、目が離せなくなっていた。
この角度から見える横顔があまりに綺麗で、たまに吹く風が髪を揺らすのもなんとも言えない。
「…3年にあんな人居たっけ。」
そう私が呟いたと同時に、その人がこっちを振り向いた。
私の存在に気付き、目が合う。
その人は、私を見るなり優しく笑った。
私はその場に堪えられず、目をぱっと逸らして教室に戻った。