君と渡り廊下と。

□君と渡り廊下と。
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教室に戻った私は、席に慌ただしく座るなり目を閉じた。

瞼の裏に焼き付いたあの笑顔が忘れられなかった。


今日は卒業式だけなので、教室には私だけ。

雪の鞄がまだ机の上にあるから、雪は委員が終わってないみたいだ。



「…一目惚れってやつ?」

1人で呟いたとき、カタン、と扉の方から音がした。

ぱっと顔をあげて扉の方を見ると、そこには遥(はるか)が立っていた。


遥は私の幼なじみで、小さい頃から一緒に居る。
いわゆる腐れ縁ってやつだ。


「は、遥。どうしたの?」
私は今のが聞こえたのかと思って焦っていた。

「ん?あ、あぁ。いや、忘れ物取りに来たんだけど誰か居ると思ったら詩乃だったから。」
「そ、そっか。」
「詩乃、なんかキョドってない?」
そう言って遥が近づく。

「え?そ、そうかな?あっ、ゆ、雪!雪知らない?」
「奥島(おくしま)?奥島なら体育館に居たけど。なんか告白受けてたみたいだぞ。」


雪、今月入って何回目よ!

雪はどうもモテるみたいで、私はその度に相談される。
それは素直に嬉しいのだが、ここまでくると流石(さすが)に恨めしい。


「奥島ってモテるんだね、詩乃。」
「…なに遥。何が言いたいの?」
私がそう言って遥を睨みつけると、遥が笑い出した。

「俺が何言いたいかなんて分かってんじゃん、さすが詩乃。」
「褒めてない!…あ。雪!」

ケラケラと笑う遥越しに、雪が見えた。


「詩乃ぉ〜どぉしよ〜っ。」

雪はそう言いながら私に抱き着いてくる。

「告白?」
「えっ、なんで知ってるの?!」
「遥情報♪」
「小野(おの)くんかぁ〜。…え?てことは見てたの?!」

雪の顔が真っ赤に染まっていく。
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