「センパイ」
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「よし、全員集まったな」
なんとか入学式が終わり、今は各寮で歓迎会をするところである。
オンボ・・・もとい、ここレッド寮に一体何があるんだ、なんてコトを新入生たちは思っていた。
約一名を除いて。
「歓迎会何するんだなぁ。楽しみだな!翔!」
「そんな事思っているのは兄貴だけっスよ」
「へー、そうなのか?」
「そうっス」
パンパンッ
手を叩く音がした。
音のする方を向くと、今日入学式で挨拶をし、途中退場して行った先輩、秋乃裕が立っていた。
「お〜、よく来たな諸君。とりあえず昼飯は用意してるけどブルー、イエローの所を比べんなよ」
ガラガラと食堂の扉(と思わしき)を開けて、さぁ中に入れ、少年達よ!
先に中に入った先輩が早く早くと手招きをする。
ぞろぞろと中に入る新入生達。
中は真っ暗で何も見えなく先に進むのが不安になったか最前列にいた新入生が足を止める。
「ようこそ!レッド寮へ!!」
パンッ、パパンッ!
合図と共にいきなり明かりがつき、奥にいる裕が片手に二本ずつ持っているクラッカーを一斉に鳴らした。ついでにクラッカーの紐を引いたのはぶてっとした茶色い猫だ。
明るくなった部屋の中を見ると各テーブルに豪華な料理が並べてある。
さっきまで表情が固かった新入生たちは歓喜の声をあげた。
「さあ諸君、好きな席に着け!」
裕の声を合図に食堂に人がどんどん入って各席に座っていく。十代、翔は出入り口に近い食堂の一番隅のテーブルに着き、並べてある豪華な料理に目をやる。
「うまそ〜!あっ、俺の好きなエビフライがある!」
「奥にまだあるからどんどん食べていいぞ。あと、デザートもあるからな。
ってことで・・・コップ持って、カンパーイ!」
一人ひとり自分のコップを持って裕と同じように後から「カンパーイ!」と続き、好きなものを自分の皿に乗せていく。
「(あっ、オレの席確保するの忘れてた・・。でも後で食べる時間ないしなぁ)」
ちょっと困り果てている裕の姿を忙しなくエビフライを粗食している十代が見つけた。
箸で持っていたエビフライを口に入れ、即座に呑み込み、席を立つ。
「センパーイ、席ないなら一緒に喰おうぜ!」
「っ、おお、悪いな」
十代のその突然の行動に気づいた翔が、立っている十代の服の袖を引き、周りには聞こえない様に、だけど十代に聞こえる様にちょっと兄貴!と話しかける。
「なんだよ翔、センパイ嫌いなのかよ」
「嫌いじゃないっス!好きっスけど・・、いきなりタメ口って」
「いやぁ、自分で席取るの忘れてたから助かったぜ。サンキューな」
「礼なんていいぜ!それよりこのエビフライどこの店の?」
「あぁ、それオレが作った」
「えっ!コレ裕センパイが作ったんスか!!」
「ああ、ココにあるの全部オレが作ったんだぜ」
「スゲー」と声をあわせて驚く十代と翔。
それを見、裕は頑張って作ったかいがあったなと喜びながらも上級生としての余裕を見せるべく表情を繕う。
「別に普通だよ。あと、センパイってやめてくんねェ?呼び捨てでいいぜ」
「マジっ!・・、あ、でも俺、センパイの方がいい」
「そうか?」
「うん。なぁ、センパイ、デュエルしようぜ!」
「ちょ、兄貴」
「受けて立つ!・・・・、といいたい所だけど。」
ガタッと席を立ち少し前にやったようにパンパンッと手を叩いた。
「とりあえず三時まで自由時間!三時になったら全員外に集まるように!」
と、一言言うとまた座り自分で炊いたご飯を粗食し始めた。
とある寮の歓迎会