君と僕の一ヶ月

□竜から始まる討伐
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かくして二人はたまに口論になりつつも、目的地である湖に着いた。
被害を及ぼすと言われる竜の住処。しかしその竜がいるとは思えないほど静かであった。


「本当にこんなところに竜がいるのか?」


竜は今留守かもしれないくらい静かすぎるじゃないか。
そう言いながらソニックはブラブラと湖の周りを歩く。


「いやソニック、湖をよく見てみるがいい。」


しかしランスロットは淵の部分を凝視しながら、ソニックを呼んだ。


「What?」


何か見つけたのか、とランスロットの近くに寄り、ランスロットが向いている方向を向いてみた。


「湖の淵…?」


ランスロットに言われた通りに湖の淵の部分をよく見てみると、湖に触れている草は赤黒くなっており、その赤黒くなっている草と隣り合わせの草は茶色くなっていた。


「草が枯れているのか…?」


ソニックがそう呟くとランスロットはコクリと頷いて後ろを向いて歩き、湖とは離れている草木から葉を数枚摘んできた。それを湖の中に投げると静かな音を立て、波紋を描きながら湖の表面に落ちる。


「葉っぱを何するんだ?」


二人は湖に落ちた数枚の葉を見つめる。


「僕の答えが正しければ…」


ランスロットがそう呟いた時、湖に落ちた葉の色が突如として変化し始めた。
まるで虫が葉を蝕むかのように赤黒い色がブツブツとまだら模様に発生し、終いには少し前まで健やかな緑色をしていた葉は血のような赤黒い色へと変化してしまった。


「!」


ソニックは少し目を見開いた。
しかもよく見てみれば湖の水が遠目で見れば自然の色と何ら変わりないが、底はまるで毒のように紫色に染まっている。
ソニックは軽く身震いした。
ランスロットはアロンダイトを構えた。


「この湖全体が毒に侵されている。竜によって。」


「でも竜の気配は感じないぞ。」


ソニックもカリバーンを構えながら湖を睨み付ける。


「恐らく今は何処かに行っているかもしれ…」


ランスロットが喋りながらソニックの方を見たら、そこにはソニックの姿はなかった。


「!?ソニック!?」


慌てて当たりを見回すとすでにソニックは湖の反対側にいて。


「おーいランスロットー!ここに何かあるぜー?」


と陽気な声で手を振っていた。

ドラゴン退治だというのにどうしてそんなに緊張感が無いのか。


「……全く、王であることを自覚してほしいものだ。」


そう思いつつも自由なソニックに呆れ、ソニックの方へと走り出したその時、


ごぽっ


湖の中心からドロリとした不気味な泡の音がランスロットの耳に入った。


「(今湖の方から何か…?)」


寒気が背筋を通る。
バッとソニックの方を見てみればまだ異変には気付いておらず、足元を見つめている。


ごぽごぽ


また不気味な泡の音が耳に入り、背筋に寒気が走る。


「(先ほどまでは湖から音などしていなかった…)」


空を見れば先ほどまで明るかった青空が、太陽を雲が覆い、重くどんよりとした黒い空へと変化していた。まるでこれから不吉なことが起きる予兆のように。
とてつもなく嫌な予感がする。
焦りと寒気を感じながらランスロットはその時、

ごぼごぼごぼごぼ…

まるで何かが湖の底からせりあがってくる音。
それが聞こえたランスロットは危機感を感じ、急いでソニックに大声で注意を呼びかける。


「ソニック!!湖から離れろ!!」


しかし、それがいけなかった。
その大声でソニックは気付いたものの、湖の奥底にいる存在にまで自分たちがどの位置にいるか気付かれてしまったのだ。


「!!」


ソニックもランスロットの声を聞いて咄嗟に湖から離れた。



が。



湖の奥底にいた存在はソニックが湖から離れるよりも速く水の中を高速で泳ぎ、ソニックがいる場所よりもさらに湖から離れている所から地面を突き破って出てきた。


「What!?」


ソニックを湖と挟み撃ちしたのである。
眼前に現れたその姿は、民から寄せられた情報と同じで、翼を持たず足にヒレと水かきを持ち、ヤマアラシのようなたくさんの鋭いトゲを持っていた。
付け加えるとすれば蛇のような長い体と鋭い瞳を持ち、体色はエメラルドブルーのような毒々しい鱗に覆われており、鋭いトゲは背中を守るかのように生やしていたことである。
どちらにせよとても恐ろしく、身の毛がよだつほど不気味であった。
獲物の姿を見つけて、竜は吠える。


「チッ…あっちの方が一枚上手だったか」


軽く舌打ちをしてカリバーンを構え、竜を見据える。それが合図となって戦闘が開始された。
竜がソニックに向かって火を吐く。しかしそれは全く当たっておらず、ソニックは軽々とそれをかわす。


「Ha!全然あたっていないぜ?」


ソニックは踏み込んでから竜に立ち向かう。
しかし、ランスロットは竜の動きに違和感を覚えた。
竜の特技である炎のブレスは素人では避けることが難しい。しかし、先程のブレスは素人でもかわせるどころかソニックに直接あたっていなかった。
だからといって竜の瞳は弱化しているかというと、弱化しているどころか獲物を追うかのように鋭く、ソニックの姿をきちんと捉えている。
ではこれはどういうことか。

その時に竜が両前足を馬のように高く持ち上げる。
その瞬間ランスロットの疑問が解けた。


…まさかっ!


「ソニック!奴は地面を破壊する気だ!早くそこから離れろ!」


とっさにランスロットはソニックに呼びかける。
だが、竜の方が一足先早かった。ソニックが声に反応するよりも早く両前足を勢いよく地面に叩き付けた。瞬間、ソニックの周りの地面がビキビキと不吉な音を響かせ、地面に亀裂が走る。
思えば竜が地面を突き破って出てきたところは水がある。ということはこの湖は地上に現れている部分よりも半径数百メートルほど広い湖であったのだ。
つまり今ソニックがいる場所の地面は草木と土できた湖から浮いた土地になるということだ。



「…ってことはまさか…」


そのまさかであった。
地面に亀裂が走り、そこからゴポリと毒に侵された水があふれてきたのだ。


「…っな!!」


ソニックは驚きつつも、冷静な判断で広い地面を転々と飛び移って移動するが揺れもあるせいか少々不安定になりつつある。
おまけに近くには今にも食そうかと竜が大きな口を開けて待ち構えていた。
竜と目を合わせた瞬間、竜がソニックに喰らいつこうと口を大きく開け、牙を向け、迫ってきた。
とっさにカリバーンで牙を受け止めるものの、竜の力が強すぎてずりずりと後ろに押しやられていく。
後ろをちらりと見てればそこには毒に覆われた湖。
この毒の湖が竜の弱点であれば背水の陣という戦いの仕方ができたのが、生憎竜は毒にかなりの耐性があり、今現在危うい状況下にある。


「…ちっ」


竜の重い牙にソニックは軽く舌打ちをし、歯を食いしばって対抗する。
ランスロットもソニックを助太刀する形で竜を倒そうと竜を後ろ側から襲い掛かる。
竜の弱点は角。その角を片方でも折ってしまえば自然と竜の力は弱小化する。


「はぁあっ!!」


背中の毒のトゲに気を付けながらアロンダイトに力を込め、竜の角の片方をスパリと斬った。


ギィアアア!!


竜が悲鳴を上げるかのように鳴き、ソニックに攻撃するのを止めた。
その隙にソニックは竜から離れるのを確認し、ランスロットは地面に着地した。それと同時に竜の角がどさりと地面に落ちる。角の中から通っていた血があふれ出てくる。
攻撃の的がランスロットの方に向き、竜が首を持ち上げる。
斬られた角からは血が出て、竜の首元を伝って地面に滴る。


「ふん、他愛もない。」


アロンダイトについた血を薙ぎ払えば、何をするんだ!と言っているかのように竜はランスロットの方めがけて、火を噴く。


「無駄だ。」


咄嗟にブレス攻撃を避け、竜の尻尾の位置に移動した。
尻尾がこちらに襲ってくるであろうことを予測し、そのまま尻尾を切り落としてしまおうとアロンダイトを振りかざした。



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