□pumpkin panic
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パンプキン・ヒル近辺にある小さな街で毎年行われているというハロウィン祭り。上質なかぼちゃが豊富に取れることで有名なこの街は毎年ハロウィン祭りを開催している。
ただしこの街には掟があり、その中に仮装をしなければ祭りに参加できないという内容もある厳しい街だが、ソニックは今年もこのお祭りにやってきていた。



「この町も去年と変わらないな。」



ソニックはあたりを見回しながら街道を歩く。町のあちこちからはハロウィンの曲が流れ、建物からはチョコレートなどの甘い匂いが漂い、仮装した者たちがお菓子を渡しあったりして盛り上がっていた。
…ちなみに。
去年は変身の効果が切れたりしてハプニングが起こったりと悲惨な目に遭ったという苦い思い出があるのだが、ソニックは今年も性懲りなくこの街にやってきたのである。
その理由は…



「チリドックがたくさん食べれると聞いたからだっ!」



という何とも簡単な理由である。
その原因は昨日、ソニックの家に押しかけてきたある二人がによるものであった。








〜昨日のソニック家にて〜


バァンッ!!



「「ソニック様ー!」」



訪問を知らせるチャイムも鳴らず、突然玄関のドアが開いた。ソニックは何事かと思い、玄関を覗いてみると突進をしてくるがの如くシャーラとマリーナが家に押しかけてきた。



「What!!!??いきなり何だよ!?」



ソニックは突然家に押しかけてきたシャーラとマリーナに大変驚いた。
マリーナとシャーラは「アーサー王と円卓の騎士」「アラビアンナイト」の本の世界の住人であり、ソニックたちの世界の住人ではないのだ。

ではなぜ彼女らはここにいるのだろうか。



「それはソニック様にお話があってここに参りました。」



マリーナがニコニコと笑みを浮かべてソニックの問いに答えた。



「今年もこの時期になるとハロウィンとやらのお祭りが開催されるそうですね。」



パンプキンヒルで毎年開催されるハロウィンパーティーのことである。



「ああ。どうやら今年もやるらしいな。」



ソニックもそれに頷いた。
毎年恒例。エミーに「私と一緒にハロウィンパーティーにもちろん行くよねー?」としつこく迫られたのだが、なんとなく行く気になれずにいた。
ちなみにテイルスに一緒に行こうと誘ってみたのだが、



「僕は新しいメカの開発をしているから誰かと一緒に行ってきなよ!そのほうがきっと楽しいよ!」



と笑顔で断られたのである。
いたずらなどをされて嫌な思いをするよりも、目の前のメカを弄っていた方が楽しいからだ。それに加え、去年はハロウィンの日にメカから目を離した隙にメカが壊れてしまったという後悔もあった為に、ソニックの誘いを断った。
流石テイルス。こういう時だけあざとい。
他にもシャドウを誘おうかと思ったが去年の苦い思い出があってか誘いにくいし(というかシャドウを避けていた)、シルバーは現在未来の世界に帰っているし、ナックルズはマスターエメラルドを守る義務があるとか言ってエンジェルアイランドから離れないし、ジェットなんて遠い土地に行っているし、メフィレスやスカージなんて何しているのかすら知らない。
まあ誘う気なんて全然ないが。
エッグマンを誘おうかという考えもあったのだが、あのエッグマンの仮装姿が逆に気持ち悪かったらと思うと笑いが止まらない予感がしたので、その考えは頭の隅に追いやった。



ということでソニックは今年のハロウィンはどうしようかと一人悩んでいて、現在に至るのである。



「ソニック様は今年は一緒に行く御方はいないのですか?」


「Ah…」


シャーラの問いにソニックは言葉を濁した。
その理由はハロウィンパーティーの中に存在する。
今年、パンプキンヒルのハロウィンパーティーの掟の中に新しい掟が追加された。
“二人以上で祭りに参加すること。ただし祭りの会場内では一人行動はよしとする”
これは去年、ソニックの苦い思い出とは別だが、一人行動の仮装者たちが帰り道に襲われて金品を盗まれたり追剥にあったりという犯罪件数が多かったという理由があって新しい掟を設けたのだ。
ソニックもハロウィンパーティーに参加したいのは山々であるが、



「生憎、みんな忙しいそうで一緒に行ける人がいないのさ。」



やれやれ、とお手上げのポーズをした。



「誰か俺を誘ってくれればパーティーに行くんだけどな。」



その時、二人の目がキランと光ったような気がした。



「一緒に参加する御方が誰もいらっしゃらないのなら、私たちと一緒に参加するのはどうでしょうか?」



突然のマリーナたちからのお誘い。



「マリーナ達と…?」



「はい。私たちと一緒なら、今年はソニック様の大好きな“チリドック”がたくさん貰えるお店をご紹介して差し上げますよ。」


それから事細かく、かつ簡潔に説明をした。どうやらお菓子をくれたらチリドッグを三つ貰えるというお店があるらしい。しかも特別券を持っているともう三つサービスしてくれるというとても豪華な内容である。



「チリドックがたくさん貰えるって!?なあ、俺にもその場所を教えてくれよ!」



無論、チリドッグが大好物であるソニックは是非ともマリーナとシャーラに連れてって欲しいと頼んだ。
そしたらシャーラが少し残念そうな顔をした。



「しかしながら、そのお店は女性限定のお店なのです。」



その言葉にソニックは首を傾げた。



「女性限定?」



だったらどちらかに頼んでチリドッグを買ってきてもらうことが可能だろう。



「加えて、その店の中に入った人だけしかもらえません。私たちもチリドックという食べ物を食べてみたいというのもあり、元の世界へのお土産に持参していこうと考えておりましたのでソニック様のお気持ちも尊重したいところですが、今回は大変申し訳ありませんがチリドッグというものをお譲りすることができません。」



まるで心を読んだかのようにマリーナが残念そうに答えた。
その言葉にソニックは心が折れる音がした。



「Noo!俺だってチリドック食べたいさ!何か方法ないか!?」



チリドックが食べたくて仕方がないソニックにシャーラとマリーナは困りつつ、少しお待ちください、と二人で後ろを振り向いた。

その瞬間、二人の天使のような微笑みが良からぬ小悪魔の微笑みに変貌した。



「(この調子でしたらソニック様の女装姿が見れるかもしれませんよ。)」


とシャーラ。


「(元の世界への良いお土産になりますわね。彼らは喜ぶことでしょう。)」


とマリーナ。
実はこの二人はただハロウィンパーティーに参加したくてこの世界に来たわけではない。
ソニックを女装させたくてわざわざこのような入り組んだ計画を立てていたのだ。二人ともニヤついていて、顔がとてもよろしくない。
本の世界の住人たちは皆ソニックが可愛くて仕方ないのである。
二人はもうしばらく相談もとい計画のことについて話し合った後、くるりと振り返ってソニックの方を向き、ある提案を出した。



「でしたら、ソニック様も"お店に入れるような恰好"をしてみてはいかがでしょうか?」



その提案に対し、ソニックは目を点にした。



「…へ?」



「そうですよ!その恰好ならばお店に入っても大丈夫です!確か、そのお店は"そのような恰好"でも入ることは許されています。ソニック様も是非とも"そのような恰好"をしましょう!きっと似合うはずです。」



「…え。」



そうと決まった瞬間二人の動きは素早かった。



「服については予め用意してありますよソニック様。」


と言ってシャーラはその店に入れるような服装をどこからかともなく引っ張り出してきて、


「服のサイズもピッタリですのできっとお似合いですよソニック様。」


と言ってマリーナはソニックを魔法でがっちりホールドした。


「え、あ…what、待っ…」


「私たちが綺麗に仕立てましょう。」


「きっと可愛らしいお姿が見られますよ。」


ソニックは待てと言う間もなく、抵抗する間もなく、


「「ふふふふふふふふ………」」



「ちょ…ま、待てお前ら……っーーーーーー!!!」


よからぬ笑みを浮かべた二人によってソニックは声にならない悲鳴を上げながら無理やりハロウィンの衣装に着替えさせられたのであった。











〜そして現在〜


そんなことがあり、ソニックは仕方なく簡単に女装できるオーソドックスな魔女の格好でいるのだ。黒をベースにシンプルに仕立ててあるワンピースのような魔女の服装は周りの人達と違い、あまり目立たないという利点があり、また大きなつばがついたトンガリ帽子は顔を隠すことができるということから彼女たちはこの服装をチョイスしたのである。
今のソニックには着替えるという考えなど毛頭にない。


正直言って、恥ずかしい。

女装なんて初めてなので更に恥ずかしい。ソニックの頬がカーっと赤くほてるのがわかる。



「ふふっ、とてもお似合いですよソニック様。」



シャーラが柔らかく微笑む。



「他の女子に負けないくらいとてもかわいらしいお姿です。」



マリーナが嬉しそうに微笑んでソニックの方を向く。



「………おう。」



気力のない返答をする。
余談だがソニックは衣装に無理やり着替えさせられただけでなく、二人にたくさん写真を撮られたが為に、疲弊し脱力しているのである。
しかしチリドックのためとあらばソニックは頑張るのであった。







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