短編

□御免
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「あ、ああああ…」




今日、私は罪を犯しました。
大好きな祖父を殺してしまいました。
何故、殺してしまったかと言うと疲れたからです。
祖父は誰かの手を借りないと生活が出来ない状態でした。
食事、トイレ、寝返り、入浴など誰かが助けないといけません。
つまり、介護しなければいけない状態。
ベッドに寝かせるのも、おむつを変えるのも、食事をペーストにして摂らせるのも全部、腰の悪い祖母の為、面倒事を避けたい大人達の為、私が祖父の介護を献身的にやっていました。






「ふぅん。献身的、ねェ」




だけど、いくら介護しても、いくらリハビリしても回復の兆しとやらは見えなくて、祖父はどんどん弱り、我が儘や泣き言が増えました。
それでも私は、祖父を励まし、支え、少しでも回復するよう努めました。
ですが、今日祖父を助ける為の私の手が祖父を殺していたのです。
祖母は月に一度の大学病院での検診日で留守でした。
必ず留守の間は祖父の面倒を頼まれ全うするのに、何故。
私の手は、皺の入った喉を力強く握り締めていたのでしょう。





「知らねェよ」





気付くと私は「ごめん」と謝罪の言葉を口にして泣いていました。
どれくらい泣いていたか分かりません。
ふと、目に入った時計に慌てたのをよく覚えています。
祖母が帰って来たら、非常に都合が悪い。
焦った私は死んで詫びようと死ぬ事を選びました。
祖父が眠れないからと処方して貰った睡眠薬と台所から持ち出した包丁を上手く利用して、なるべく事故死に見えるよう死にました。





「潔い死に方じゃねェじゃん。自分の保身の為に事故死に見せ掛けるとか無駄な労力ご苦労さん」





そして目が覚めたら、黒い球のあるこの部屋に来ていたのです。
突然、「星人」をやっつけて生き残れだなんて俄かに信じ難いですが、目の前にすると現実、なんですね。
西くん、貴方にこの部屋に対する疑問をぶつけてよかった。





「あそ。俺もアンタにぶつけたい疑問があるンだけど」




疑問?
私に何か疑問なんて






「その、“ごめん”ッてどういう意味で言ッたの?」




だから、謝罪で




「謝罪じゃなくて、拒絶、だろ?」




拒絶だなんて私は、





「“アンタの面倒を見るのはもう御免だ”ッて思ってたんだろ?」




違う違う違う。
私は、私は、人生とは何か、世の中はどんな仕組みとかたくさん知恵を授けてくれた祖父が好きで、尊敬していて、面倒を見るのを御免だなんて思っていないです。




「でも殺した事実は変わんねェぜ、偽善者」




偽善者じゃ、ない
私は、使命を、偽善なんかじゃない。
お世話になった恩を返したかった。
でも毎日毎日、祖父の我が儘や周りの非協力的な態度には耐えられなくて…あ゛ッ






「ちッ。クッソ!」




私は、私は、つ、み、を






「今の一撃で死んだか。ッとに使えねー。……まあ、点数が取れたから、いいか」






“ごめん”ってどんな意味で言ったんだっけ










知らない意味
(何気ない一言の裏側)






全力でごめんなさい。罪の意識について書きたかったんです。全く書き表せてない…けど


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