短編

□浮き彫り
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(いいなぁ…)




みんなは軽々と100点を取れて羨ましい。
あたしは100点を取るのに随分時間が掛かってしまう。
理由は分かってる。
遅いんだ。
撃つタイミングも避けるタイミングも何もかも遅い。
偶然、この部屋の古参メンバーとして居る同じ学校の西くんは軽々と点数を重ねる。
他のみんなも点数を積み重ねて誰かを再生したり、新しい武器を手に入れたり、この部屋から解放されたり…






「羨ましい」


「何が?」


「周りが」


「周り?」


「羨ましい」




みんなが帰った部屋。
ガンツの前でしょげている独り言に反応したのは西くん。
いつにも増して目つきが悪くて眉間の皺がちょっと深い。





「何で周りが羨ましいンだ?」


「だってみんな点数をたくさん取れたり、強かったり、学校の友達はあたしより勉強出来たり、絵が上手かったり、作業が早かったり…何でも簡単に出来るのが羨ましいの」


「それ、羨ましいか?」


「何にも取り柄が無い人から見たらそうだよ…」


「別にそんなの羨ましいとも何とも思わねーけど」


「出来るからそんな事言えるんだよ。みんな、あたしみたいなのとお情けで一緒に居てくれてるんだよ、絶対」




出来る人は出来ない人と居て優越感を感じてる。
“あんたより凄いの”という本音をしまい込んで上辺の笑顔で“頑張れ”と嘯く。
そんなのバレてる。
目が嘘に付いてこられてない。
引立て役として必要だから友達で居てくれてるんだ。
だから、あたしが何も出来ないのが浮かんで分かってしまう。





「お前悔しくねェの?」


「え?」


「あんな愚民共より劣ってるなんて考えたら悔しくなるだろ普通」


「………………」






“悔しい”とは考えた事はなかった。
いつも指をくわえるだけで、後ろから眺めるだけで踏み出さなかった。
“出来ない”って諦めて逃げて何もしなかった。
全部決め付けて落ち込んで、あたし何で気付かなかったんだろう。






「……悔しい、悔しいっ」


「だッたらさァ…そいつら見返せよ」


「何をして?」


「ンなの自分で考えろ」






じゃあな、と帰ろうとする背中を慌てて追い掛ける。
西くんと話して何か吹っ切れた。
真っさらな心に彫られた感情。
浮かび始めた模様はまだ分からない。
考える事を始めて、少しずつ動けばこの模様がはっきり浮かぶと信じて部屋の扉を開いた。











感情レリーフ
(丁寧に形をなぞる)






…最後らへんがぐたぐたで申し訳ないです


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