短編

□論理、ロンリー
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―ぱぁん




猫が膨らみすぎた風船みたいに破裂した。
自然に破裂した訳じゃなくてXガンで撃たれたから簡単に破裂。
アメリカのレンジでチンされた猫の話みたいにぐちゃぐちゃ。

撃った人は恍惚と憐れな猫で欲情。





「いつ見ても気持ち悪い」


「気持ち悪いッて言うなら毎回付いてくンなよ」


「だって猫を殺す理由が気になるから」


「あそ」




西丈一郎、14歳。
クラスメイト。
イジメられっこに見えないイジメられっこ。
ガンツ部屋に昔から居る先輩。
あたしが初めて気になった異性。





「いつから殺すようになったの?」


「ンなの忘れた」


「理由は?」


「死ぬ所を見るのが好きだから」


「そっか」




ガンツ部屋で会って、死因とか家族の話を聞いて思った。
西くんは寂しいんだ。
お母さんは自殺しちゃってお父さんは西くんに無関心。
微妙な年頃のあたし達にダメージを与えるには整い過ぎた理由。
空いてしまった胸の風穴を埋める為に始めた、って推理してみた。
それを本人に言ってない。
だってあたしは探偵じゃないし、言ったから何か変わる訳じゃないから。






「―さみしいの、?」


「は?」


「あ、…今の忘れて」




うっかり口が滑った。
というか滑らした、が正しい。
何らかの事象に理由が無い筈は無い。
だったら西くんが猫を殺す理由はお母さんの自殺。
大好きな一番慕っていた家族が死んだらストレスで可笑しくなる。
寂しさを紛らわせる為、だと思う。
あたしが猫殺しについて来るのもきっと





「寂しいのは、あたしかもね」


「何、お前…寂しいの?」


「…うん。あたしのお母さんも自殺だったし誰もいなくて、それに」


「それに?」


「西くんもお母さんに」





“捨てられた”とは口を滑らせなかった。
お母さんはあたしが大切って言ったのに、出張先でお父さんが浮気をしたと知ったら死んじゃった。
あたしが居るのに、なんで?
自分の命と子供を捨てたの?
そんなつもりじゃなかったかもしれないけど、あたしを捨てないでほしかった。





「―なんでもない」


「ハァ?意味わかんねェ」


「う…ごめん。まだ帰らないんだよね」


「ああ。まだ足りねェから」


「じゃあ行こっか」





閑静な夜の住宅街を迷子みたいに彷徨う。
寂しさを発散させる為の猫を探して親に捨てられたあたし達は、か細い鳴き声を耳にしてXガンを構えた。
今日は珍しくあたしもXガンを猫に向けトリガーを引いて、ぱぁん。












飢えたココロ
(物足りないものは埋められない)



ポルノの「ヒトリノ夜」のサビを「論理、ロンリー」って聞き違えたから書いてみた。


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