短編
□ミサキもどき
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―ぺち、ぺち、ぺち
「?」
何となく屋上に居た。
理由は特になく、本当に何となく。
間抜けな音程の拍手が聞こえてそっちを向くと知らない女がこちらを向いて立っている。
誰だ?
そもそも、愚民には興味が無いので誰でもいい。
なんだ、この違和感。
来ている制服は自分の学校のもので、学年は分からない。
顔立ちも背丈も体型も普通。
でも違和感。
「おまえ、何か用でもあンの?」
言葉を紡がず拍手を続ける女に問うてみたが無視。
ぺち、ぺち。
屋外なのによく聞こえる拍手。
そこから生えているかのように動かず俺を見ている。
気味が悪い。
何故俺を見て拍手をしているのか理由が分からなくてイライラする。
「!」
今まで動かず拍手をしていた女が初めて動いた。
屋上の扉へ向かい屋内へ入った。
何となくその女を追って屋内へ入り階段を下る。
ざわめく廊下の音声が近付いて、そういえば放課後だッけかと思う。
「!?」
ぐらりと体が前にのめり浮遊感。
不快な感覚に自分が死んだ時を思い出す。
気持ちが悪いし、その時に何を考えて死んだかも走馬灯のように全て駆け巡る。
落下点の床が見え、違和感の答えを理解して暗転。
♂♀
「ねえ、昨日の“ゾクっとする話”見た?」
「見た見た!あれヤバくない?なんだっけ、拍手のヤツ!」
「逆拍手だよね?」
「違うッて。逆手拍手だよ」
「ああ!手の甲で拍手する霊のか!あれマジヤバい」
「あれって向こうの世界に歓迎しますッて意味なんでしょ?」
「え、ちょマジ怖っ」
「ねえ、それさぁ隣のクラスの西にやったら?」
「それいいかも!」
「でも、西が知ってたらマジ終わりじゃね?」
「多分知らないってェ」
「ねえ、ねえ、ねえ、ねえッ!大変!西が踊り場で倒れてるッ!」
「マジ!?」
「何それヤバくね?」
「死んでるの?」
「わかんないけど、あれ死んでるかも!」
「マージーで?」
「やだぁ…帰れないし」
「ねえ、気持ち悪いから帰ろッ」
「うん、…帰ろ」
―ぺち、ぺち、ぺち
「何?何?」
「これ何の音?」
「え、誰?」
「!?」
「きゃあああああああああッ!!!?」
「ひぃっ、…あああああああああッ!!!!!」
おいでよ、こっちへ
(極楽より常世)
小説のリハビリなう。録画してた「ゾ〇とする話」を見て書いてみた。本当は七人ミサキって妖怪をモチーフにしたかったのに…