お題

□俺はいるよ、好きな奴
1ページ/1ページ

いつも気が付くと目で追ってた。

野球部の篠ノ井君。

特に話した事はないし、接点もない。

けれど気がついたら、彼を目で追ってた。

篠ノ井君は常に独りでいる。

人を寄せ付けないオーラがあるみたい。

所謂一匹狼ってやつなのかな。

そんなとこにさえ、私は惹かれてしまった。

「一条」

「え?」

授業が終わって黄昏れていると、後ろから声を掛けられた。

声の主は篠ノ井君。

「あ、えっと、何、かな?」

吃りつつも、返事を返す。

「次移動。皆移動してる」

「えっ!?」

教室を見渡すと篠ノ井君と私以外、誰もいなく、シンと静まり返っている。

「あと、これ」

「?」

篠ノ井君に渡されたのは、手紙だった。

「先輩に渡せって頼まれてたやつ」

「先輩?」

「上杉さん」

「上杉先輩?」

特に手紙を貰うような事はしてない(はず)。

「…一条は上杉さんの事好き?」

「んー…特に接点ないしな…。よく分かんないかも。篠ノ井君はいないの?好きな人」

手紙から視線をあげ、篠ノ井君に向ける。

なんで聞いてしまったんだろうと後悔した。

けど、聞いてしまった事はもう遅い。

私は篠ノ井君の返答を聞いた。

「俺は…」



俺はいるよ、好きな奴



(分かってた。)
(でも、その言葉は深く私の胸に刺さった。)









2012.12.30

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ