イナイレ

□白い雪のプリンセスは(源佐久)
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「佐久間?」
源田は佐久間の名を呼びながら屋上のドアを開けた。
そして、ドアのすぐ隣で、壁にもたれて寝ている佐久間を見つけた。
「なんだ、寝てるのか」
すやすやと穏やかな表情で眠る佐久間を見ていたら、なんだか起こせなくなってしまった。
始業のチャイムが聞こえる。
授業に出ろ、と言うため探していた筈なのに、気づけば佐久間の隣に座ってぼんやりと空を見上げていた自分が、なんだか可笑しかった。
「まぁたまにはこんなのも悪くない、か」
誰に話しかけるでもなく、源田は呟いた。
それにしても、こんな穏やかな佐久間を見るのは久しぶりな気がする。
眠る佐久間を見つめながら、源田は微笑んだ。
「ん…」
不意に、寝返りのためか、佐久間が身を動かした。
とたん、佐久間の体がそのまま横に倒れそうになり、源田は慌てて佐久間の肩をつかんで自分の方へと引き寄せた。
寝相悪いのか、と思ったら、なんだか佐久間を身近に感じられたような気がして嬉しかった。
だが、クスッと笑って、気がついた。
「…この体勢は……」

佐久間が倒れないように、と思って思わず自分の方に引き寄せてしまったが、これじゃあまるで佐久間を抱き寄せているみたいだ。

とりあえず、佐久間の肩にのせた腕を外そうかと思ったが、すぐに、佐久間を起こしてしまうかもしれないと思ってやめた。
どうしようかと困って、なんとなく佐久間の方を見てしまう。
身長の差のせいか、源田の肩のあたりで規則正しく寝息をたてて眠る佐久間の顔は、フィールドの上で見るよりずっと幼く見えた。
(そういえば、佐久間の顔じっくり見たことなんてなかったな)
(まつげ、長いな)
(ほっぺた柔らかそう…)
そんなことを考えていたら、自由な方の手で無意識のうちに佐久間の頬に触れていた。
(気持ちい…)
(唇、とか、なんかしてんのかな。すっげぇ綺麗…)
手のひらは頬に触れたままで、親指で佐久間の下唇をなぞる。
自分のそれとは違う感触のそれを、純粋に愛おしいと思った。
鎖骨のあたりがきゅうう、と軋むような、変な感じがする。
でも、嫌じゃない。
頭がぼーっとする。
もっと触れたいと思って、そのままそっと顔を寄せた。

「ん…」

そのとき、佐久間が動いた。
佐久間のまつげが微かにふるえて、綺麗な白銀の髪が源田の頬をくすぐった。
「…………ッッ!!!」
佐久間の顔が目の前にある。
それは、唇同士が今にも触れそうなギリギリの距離。


(何してんだ、俺!)


慌てて佐久間から顔を離す。
顔が真っ赤で、心臓がばくばくいっているのが自分でもわかる。
「俺、最低…」
火照る顔を覆って源田は恥ずかしさをおさえた。

佐久間の目が覚めたら、どんな顔して会ったらいいんだろう。





白い雪のプリンセスは
(いつだって、王子様(君)のキスを待ってるの)




(あぁ、もう…寝込み襲うぐらいやってみやがれ、ばか)
耳まで真っ赤になって顔を背ける彼を薄目で見ながら、佐久間は気づかれないようにそっとため息をついた。

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