続・ふたりよがり

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あれから一週間

今日は12月22日。
翔さんは年末の仕事の準備があわただしく始まり、家に帰ってこなかったり、帰ってきても真夜中だったりしてお互いに顔を合わせることが少なくなった。
まあでもそれはいつものこと。あの日は、彼にとってほんとうに束の間の休息日だったのだ。

私は私で年明けのテストに向けて授業がラストスパートをかけていた。それも明日まで。明日、23日から私の学校は冬休みに突入する。クリスマスの予定は、真っ白。

キーンコーンカーンコーン
「じゃあ、年内の授業はこれで終わりになります。年明けにまた会いましょう」

4限が終わり、私はレイカとともにノートや教科書を片付け始めた。

「わ〜終わった〜〜」

ざわつく講義室。隣でレイカが両手を伸ばしながら疲れた声を出す。

「あはは〜今年もあと一週間ぐらいか〜早いなあ」
「ほんとだよね。あ、キリコは年末どうするの?」
「ん〜、どうだろう。お母さんいまお父さんのところいってるからなあ」
「単身赴任先?」
「そうそう。北海道。雪すごいって」
「まじか〜いいなあ。じゃあキリコはひとり?」
「一応彼氏のところいるけど、年末忙しい仕事だから家にいない」
「そっかあ〜」

席から立ち上がり、教室の出口へ向かう。

「レイカ今日メガネだね?」
「おそ。」
「・・・・いや最初から気づいてたよ?」
「今日は朝コンタクト入らなくて・・・メガネできちゃた」

レイカは小さな顔に大きなべっ甲柄のメガネをかけている。美人はなにをしてもきれいだなあ。

「メガネだと地味さが際立つでしょ?」
「え?全然。かわいいじゃん」
「いやいやいや、今日はケイスケにも会わないし寒いからズボンだし」
「あはは。私も彼氏が大学にいないからいつもズボンだなあ」
「だよね。わかる。スカートとかデートの時しかはかないもん」
「スカート寒いもんね」
「こんなときでもJKは生足ですよ」
「さすが」
「今朝駅で見た」
「若いなあ〜」

そんな雑談をしながら、
2人で講義室を出ようとしたそのとき

「あ」

レイカの声がして、振り返ると出口のそばにケイスケの元カノがいた。キラキラ集団の中に彼女は笑顔で立っていた。

「え〜塚本くん家目黒なんだあ?」
「うん!だから来いよ!明日!」
「そうだよカンナ行こうよ〜」
「あはは、サンタは来るかな〜?」
「くるくる!じゃ、女子はサンタのコスプレな!」
「あははは。まじ〜?」

ケイスケの元カノは派手な男女6人の輪の中で、ケラケラと鈴のようにかわいい声で笑っていた。どうやら明日のクリスマスパーティかなんかの話らしかった。
彼女たちは生足に短いスカートをはいて、かかとの高い靴を履きこなしていた。

私は無意識に、自分の足元を見降ろした。
黒いスキニーに薄汚れたムートンブーツが見えた。
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