続・ふたりよがり
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【ゴールデンボンバー鬼龍院翔、半年間活動休止】
そんな話題が1週間ほどニュースでちらほら流れた。
結果として、翔さんは有言実行をした。彼が何度も書き直していた手書きの文章が画面に映し出されてた。
私は、その長い文章の一部分が、何度も耳触りの良いアナウンサーの声で読み上げられるのを聞いては、胸が詰まる思いがした。
彼は何度もそのニュースを見ては、切り取って伝えられた文章の一部分を嘆く。
ニュースのコメンテーターは、翔さんが以前喉の調子が悪かったことと絡めて、悲しげな顔をしたり、
あるいは「彼がいなくてメンバーは大丈夫なんですかね」とか言ったりした。
「鬼龍院翔がいなくてもゴールデンボンバーは大丈夫とか言う人も嫌だけど、鬼龍院翔がいないとゴールデンボンバーはやっぱり駄目だとか言う人も嫌だ。」
と翔さんはぶちぶち文句を言った。
そのたびごとに、私は「本当に知りたい人は、ブログでちゃんと全文見てるから全然大丈夫だよ」と彼に慰めの言葉を吐く。
それ以上は言わなかった。
彼とファンとの間にどんな言葉のやり取りがあったのかは見なかった。きっと泣いてしまった子がたくさんいただろう。
「神様」を失った子たちがたくさん泣いた。
とにかく、翔さんは3月いっぱいまでは普通に活動をし続けるので、お正月が過ぎると今までどおり帰りの遅い日々が続いた。
気が付くと1月の後半が過ぎ、2月に突入しようとしていた。
私は大学での後期試験が終わり、いよいよ留学についての動きを本格的にはじめているところだ。
「キリコ。あんた留学行くんだってね」
夕方、大学の食堂で勉強をしていると、ゴンと肩をつつかれて、振り返るとレイカが立っていた。
「うん、あれ?言わなかったっけ?」
とぼけた声でそういったあたしにイラついたのか、レイカは無言で私の目の前に座った。
「聞いてませんわよ」
彼女がひどく整った顔で私を見る。頬杖をついて、その掌に収まるほど小さな顔は、顎のラインがすこし丸くなった。お正月太り?
「・・・・肥えた?」
「まじ?わかる?」
レイカが両手をほっぺに当てる。
「うん」
「やっぱ餅たべすぎた・・って、それはそうなんだけど、それはおいといて」
「あははは」
「こら。あんたねえ、イシガミくんから留学のこと聞いたときの、わたしのショックの大きさがわかる?」
「え?」
「一番仲良いのは私なんだから私に先に言ってよ!」
「・・・」
ちょっと、感動した。
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