続・ふたりよがり
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「・・・・」
レイカをちらりと見る。
彼女も、私と同じように、思っただろうか。
「カンナが今年はいるとかレアだよな〜」
「え〜」
「去年はお前彼氏と過ごすから断ったべ」
「あはは〜そうだっけ〜」
「今年はカンナも一緒にクリパだね!」
なんか・・・あの子あんなに髪の毛明るかったっけ?あんなに頭軽そうな男集団と仲良かったっけ?あんなに高い靴履いてたっけ?
あんなしゃべり方だったっけ?
「レイカ」
レイカの腕を引っ張る。
はっとしたように、レイカは私の方を向いて、
「ごめん、行こう」
と笑った。
「・・・うん」
バタンと教室のドアを閉めて廊下に出ると、頭の中でまだあの6人の笑い声がするような気がした。
レイカは私の隣で何も言わず、うつむいて廊下を歩く。
「・・・・・」
レイカ。
何を思ったの?何を考えてたの?
私と同じかも知れない。
「レイカ、クリスマスどうするの?」
息苦しさの中からしぼり出したのは、その一言だった。
「・・・ん〜・・・。24日はバイトだけど、25日はケイスケと出かける」
「そっか〜、バイトかあ」
「うん。でも、大丈夫だよ」
レイカが顔を上げる。
「・・・・」
「私たち、わりと大丈夫だよ」
とにっこりと笑った。
「・・・・・うん」
私もレイカに笑いかけ、二人で階段を下りて中央棟の外へ出た。
「じゃあ、わたし図書館行くから・・」
「うん。キリコ、良いお年を〜」
「うん!良いお年を〜!」
帰っていくレイカに手を振る。
「ふ〜・・・」
私は一人、図書館へ歩き出す。
トコトコトコトコ、歩き出す。
キラキラの爪。
スカート。
生足。
巻き髪。
まつげカール。
ハイヒール。
クリパ。
私の中の、重いしこり。
ピッ
学生書をタッチして図書館に入る。図書館にいるのは、真面目そうな人たちだ。私も真面目そうなんだろうか。いや、真面目なんだけど。別にいいんだけど。
3階の『グローバル』のコーナーに行って、留学雑誌を数冊手に取る。そんな私はぺったんこ靴。いや、何が悪い?
おとなしく椅子に座ってペラペラとページをめくった。
「・・・・」
私の中の、重いしこり。
年末は、これだからいやだなあ。浮足立つ世間に、置いてけぼりの私。年末はどうせ一人ですが。お母さんとお父さん、二人で北海道。社宅のある札幌から出て、仲良く函館とかとまるらしい。いいな。いいな。つーかお父さんこないだまで海外勤務じゃなかった?いつの間に札幌だったんだ。
サラリーマンは年末も土日も休みだ。夜も大抵は家にいる。
翔さんは?
彼は年末も仕事、曜日関係なく仕事。夜も仕事。
私は、このまま社会に出て、企業に勤めて。サラリーマンになったとして。休みの会わない彼を、一人で夜に待つんだろうか?
待っているだけの人生?
留学雑誌をめくる。
石上君。なにしてるかな。留学先でがんばってるかな。
電話、まだしてないな。
「・・・・・・」
パタンと雑誌を閉じて、返却棚に戻した。