続・ふたりよがり

□4(鬼龍院視点)
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そういえば、あのときはどっちが先に謝って仲直りしたんだっけ。
・・・キリコちゃんはわりと頑固だから、喧嘩したら自分からは折れないんだよなあ。絶対あの時も俺が先に謝ったんだろう。

「・・ん〜」

そんな昔の喧嘩のことを想いだしていると、急にゴロンとキリコちゃんが寝返りをうった。

スースーと寝息を立てながら眠る彼女。
あ。
さっきの寝返りのせいで、布団から肌色の腕が出ている。寝ているときに布団が暑かったからか、少しジャージの袖がひじの方までまくり上げてある。

・・・風邪ひくよ。

そう思って、彼女のまくってある袖を手首の方に下げてあげようと、俺は手を伸ばした。

「・・・・・・・」

彼女の白いその腕に痣があるのを見つけた。
はじめてかもしれない。まじまじと見るのは。

わ・・・こんなに青紫になってる・・・。
痛そう・・・
えー・・こんな内側にも・・知らなかったな・・・・。
なんか変な形のあざじゃないか?

不思議に思い、もっとよく見えるようにそっと痣の無い手首の方をつかもうと手を伸ばした時、


「・・・・・!」


その痣の形と、俺が伸ばした掌の形が、重なって見えた。

「・・・・・」

心臓が息苦しいほどにどきどきする。顔をよく腕に近づけてみると、それはどこかにぶつけたような痣ではなく、

人の手形だった。

息が詰まる。
ひゅうひゅうと喉が鳴った。

「う、うそだ・・・・」

つかもうと伸ばした俺の手の影と、
その痣はそっくりだった。

キリコちゃんは、規則正しい寝息を立てて、その長い瞼をしっかりと閉じて寝ている。

俺・・・
うそ・・・

お、
俺の・・・手形・・・?

キリコちゃんが言っていた言葉を思い出す。

『えっと・・・・あ、昨日・・こ、転んだの』
『自転車とぶつかったから・・・』
『骨折とかは絶対ないから、病院は行かなくてへいき。』

想えば、あのときの様子はどこかおかしかった。いつもと違って口ごもっていて、たどたどしかった。
俺の、目を見ていなかった。

「・・・・・・・」

痣が見つかる前の日、俺はめずらしく酔っぱらっていた。
久々の高校の同級生たちと飲んで、調子に乗って。キリコちゃんの留学のこともあって、うだうだ言っていた俺に友人が「まあ飲もう飲もう」と言い、酒がつい進んで。

朝起きたら、玄関で寝ていた。

キリコちゃんは、何もなかったよと言ったけれど、きっとなにかあったんだ。
絶対、そうだ。

この痛々しい痣は、
絶対俺のせいだ。


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