短編2

□思春期。
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自分を一番カッコよく見せる方法を知ってるやつは、本当に得だと思う。

俺、市村恵斗(いちむら けいと)はそんなため息をつきながら教壇に立つ幼なじみを眺めていた。
幼なじみとは言え、俺とは7つも年が離れていて、あっちは教師、こっちは生徒。
唯一の接点だったお隣さんというポジションも、向こうが教員宿舎とやらに引っ越してからはあっけなく消え去ってしまった。

薄々は気付いていたけど、こうして改めて離れてみると、いやというほど実感した。

瀬尾大地(せのお だいち)は、格好いい。
そりゃもう、文句なしに。

授業中だろうが、全校集会中だろうが、休み時間に生徒とドッジボール中だろうが。

常にベストショットが撮れるくらい、格好いいのだ。

はぁ、と重いため息をまたひとつ。
無理矢理視線をノートにもっていけば、真っ白なそれにあわてて黒板に向き直る。
自然と視界に侵入してくる幼なじみから意識を反らしながら、必死にシャーペンを走らせた。
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