短編

□自信の根拠
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俺は桃山太一(ももやま たいち)、今をときめく16歳だ。

……俺、今変なこと言った?言った、よな……。
なんだよ今をときめくって……。

それもこれも全部あいつのせいだ。
あの妙ちくりんが毎日毎日飽きもせずにおかしいことばっかり言ってきやがるから…!


……え?
妙ちくりんって誰かって?


決まってるだろ、あの変態関西弁書記『深海俊平(ふかみ しゅんぺい)』だよ!





 * * * * *





「へい太一!おはようさんっ!」

俺のさわやかかつ健康的な朝は、こいつの顔を見た瞬間から終わりを迎える。

げんなりとする俺を無視し、深海は朝からテンション上げまくりだ。

「あかんなぁ太一、朝から挨拶もできんほど俺に見惚れてたら一日持たんで?」

誰が見惚れてんだよ、誰が。
まぁ嫌がらせとしか思えないお前の態度に確かに一日持ちそうもないけどな。

入学以来続くこいつの自信過剰さにいい加減うんざりしすぎて、もう訂正する気すら起きない。

「おぉ、今日はアンニュイな雰囲気でいくんやな!そんな太一も色っぽくてええなぁ♪」

溜息をついたらついたでこんなわけのわからない事を平然と並べたてやがる。

「ほな俺も今日はちーとストイックな感じでいこかな。いや、そんなんしたら今日の俺はいつもと雰囲気違うって周りからモテまくるんちゃう?…あかんやん!そんな事になったら太一が心労で倒れてまうやんか!」

なぁ太一、とまじめな顔して俺の肩に手を置く。

あぁ、だめだ。
前言撤回。
俺、訂正する気力がわいてきたよ。

「誰が倒れるかぁ!!勝手にモテてりゃいいじゃねーか!むしろこっちは大歓迎だっつーの!さっさとストイックな雰囲気醸し出して俺の前から失せろ!」

怒れるままに罵倒する俺に、深海はさらりと言い放つ。

「そんなに嫉妬せんでもえぇよ。可愛いなぁ太一は、嫉妬深いんや・か・らっ♪」

つん、と言葉じりとともに額を人差し指でつつかれる。

……さ、寒気が!鳥肌が!!

「あ、しもた。今日一限目移動教室やったわ。じゃーな太一!放課後迎えに来るから待っとるんやで(はぁと)」

なにがはぁとだぁぁぁ!
気色悪いわぁぁぁ!!!!

「おはよう太一」

「あ、おはよう山田」

クラスメイトの出現に、俺はようやく息を落ち着ける。
と思ったのもつかの間。

「今日も深海先輩と一緒かぁ。相変わらず愛されてるよなぁお前」

額に手をかざし、日の光をよけながら眩しそうに深海の後ろ姿を見つめる山田。

「やめろ!愛されてるとか言うな気色悪い!」

おかげで治まりかけた鳥肌がまた…!

「そうは言うけどさぁ、愛されてんじゃん実際。何が不満なの?」

な、何を言い出すんだこいつは…!

「おま、いつも見てんだろうがあの変態ぶりを!」

あの異常なくらい俺に付きまとう姿を…!

「えー。俺深海先輩なら全然いいけどなぁ。カッコいいし面白いしさぁ。そりゃ麗しの華月会長と比べたら劣るかもしんないけど、実際深海先輩ってば結構もてるんだぜ?」

よ、世の中間違ってる…!
なんであんな変態がもてるんだ!?

いや、そんな事はどうでもいい!

「華月会長と変態深海を同じ土俵に上げるな!」

あのすべてにおいて完璧な華月会長と比べることすらオコガマシイ……!

「でたよ華月会長シンパ。あーあ、深海先輩も可哀相に」

「ふん。あんなやつ可哀相でもなんでもないね」

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