FF7
□そんなあなたが好きなんです。
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「どしたのクラウド?」
ぬすむのコマンドマテリアを嬉々として磨いていたユフィが不意に俺を見て言った。
「いや、なんか急に悪寒が……」
きょろきょろとあたりを見回すも何も不審な物は見当たらず、首をかしげながらポリポリと頭を掻いた。
おかしいな、確かに何かオゾマシイ気配を感じた気がしたんだが。
ひとり首をかしげているクラウドから見えないよう、彼の死角を高速移動しながら恍惚な笑みを浮かべる男がいた。
「ふっふっふっ……かわいい奴、私の存在を肌で感じたか」
言わずもがな、かつての英雄セフィロスその人である。
彼の愛してやまないチョコボ頭の可憐な少年は、ちょっと見ない間にまた強く美しくなった。
ミッドガルの湿地にすむ巨大な蛇も、難なく倒せるようになっていた。
――以前はわざわざ自分を追いかけやすいように倒してやったものだが。
そんな親切も今は不要のようだ。
だがこんなにもたやすく死角をとらえられるなど、まだまだ甘いな。
「やはり私が手取り足取り腰取り、じっっっくり訓練してやらねば……!ふふふふふふ」
「……!?」
「わわわっ、っぶなー。マテリア傷つけそうだったよもう!今度は何!?」
プリプリ怒るユフィを尻目に、俺は血眼(ちまなこ)になってもう一度あたりを見回した。
いる……!
奴だ!
この気色悪い悪寒は、間違いなく奴に違いない……!どこだ!
あの変態、またしても俺のあとをつけてきやがったな!
その上性懲りもなく吐き気満載の情欲にまみれた迷惑極まりない妄想を膨らませているに違いない。
「ヴィンセント、ユフィ!アイシクルロッジに急ぐぞ!」
どれだけ探しても見つからないので移動を決意する。
あれだけ露出しているんだ、アイシクルロッジあたりに行けば腹を下してしばらく追ってこれなくなるに違いない。
とっさにしてはいい思いつきにうきうきと荷物をまとめ出す俺に、ヴィンセントは眉をしかめた。
「森で夜の移動は危険だぞ、クラウド」
「そうだよ〜。それに…」
なおも何か言い募って準備をしようとしない二人に俺は必死の形相で言った。
「俺の身体に迫っている危険の方が緊急だ」
それで全てを察したのか、二人は一瞬憐れみを浮かべ、黙って移動を開始した。
いろいろ釈然としないが、そんなことを言ってはいられない。
ふふふ、ついてくるがいいセフィロス!
そしておなかピーピーになるといい!
ふはははは!
「次はアイシクルロッジか。わざわざ寒い所に行くなんて、ふふ、さてはクラウド、私に温めてほしいんだな?」
素直に言えばいつでも温めてやるのに…恥ずかしがり屋だ。
「さあ私の腕の中へ飛び込んでおいでー!」
そうしてクラウド一行+英雄(ストーカー)はアイシクルロッジへ向かいましたとさ。
おしまい。