FF7
□コールドラッシュ
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ふと、底冷えするような暗い眼差しをする時がある。
そんな時は決まって独りになりたいと言い、奥の部屋へ籠ってしまう。
全てをはね除けるような背中を見送った後は、言い様のない不安に駈られて彼の残り香があるシーツへくるまり、こう思うのだ。
彼の抱える悲しみも怒りも、闇をも受け止められたらいいのに、と。
その思いの中にあるのは単なる善意などではなく、そうなれば彼の拠り所としてずっと側にいられるという、我欲に満ちたものであるのだから口に出すことが憚られている。
真に彼自身を案じているだけでは無いのだから、それが酷く醜い事のように思えてずしりと心が重くなるのだ。
いつか。
きっとそう遠くない未來に、彼は自分の前から消えてしまうだろう。
それもとんでもなく暗い光をその目に宿して。
その時自分は、彼に声を掛けることができるだろうか。
彼の背中が発する悲鳴を、優しく抱き締めてあげられるだろうか。
今のように、己の劣等感と、醜い欲にからめとられたまま、動けないなんてことが無いといいのだけれど。
fin