FF7
□そこに在(あ)ること。
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正義とは、なんなのだろう。
彼の取り乱した姿を見たとき、不意にその言葉がよぎった。
* * * * *
「……どうした、クラウド」
くすりと微笑まれ、自分が彼を見つめていた事に気がつく。
頬を真っ赤に染めてあわただしく目を逸らしていた少年時代が懐かしい。
こうして何事もなかったかのように微笑み返せるようになったのは、いつからだったか。
「いや、なんでもない。アンタこそ、その本さっきから進んでないよ」
敬語であった口調がこんな風にくだけたのは。
無理矢理話題を変えてみれば、セフィロスの不遜な笑みが深くなる。
「お前の熱い視線を受けていたら本の内容なんぞ入ってこないさ」
裏を返せば、少なくとも本をめくる手が止まったその時からクラウドはセフィロスを見つめていたという事だ。
その事実を気づかされたとき、さすがのクラウドの頬にも赤みがさした。
「なにか、あったのか」
手にしていた本を傍らに置き、ふわりとクラウドのそばへやってくる。
先ほどまで本を支えていた左手はクラウドの頭を優しく包み、ページに添えられていた右手はクラウドの顎をくいとあげていた。
相変わらず無駄がない、素早い動きだ。
未だにあの大空洞で彼に勝てたことが不思議で仕方がない。
仲間たちの支えが無ければ、あの場に立つことさえできなかっただろう。
カダージュ達が現れた時も、独りでは立ち上がることすらできなかった。
それはクラウドの強みでもあるが、弱点でもあると思う。
セフィロスは最終的にはクラウドの剣の前に倒れてしまったけれど、それまでただ独りで戦う孤独に耐えてきた強さは、クラウドには無いものだ。
彼の強靭な肉体と精神は、ジェノバに侵されさえしなければ、足元にさえ及ばなかっただろう。