短編2
□届け、この想い
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それは、突然の感情なんかじゃない。
きっかけはきっと、小さな焦り。
呼びかけた声に気がついて貰えなくて、モヤモヤしたのがそれだったのか。
街中であいつの隣に当然のように佇む女を見た時だったのか。
僕以外のヤツに、僕に見せるのと同じ笑顔を向けていた時だったのか。
時々自分を襲う感情が嫉妬だと気が付いたのは、どうしようも無いくらいあいつに惚れていると認識した時で。
「ごめんなさい、僕は貴方が好きなんです」
街を見下ろせる夕暮れの公園で、精一杯の去勢をはって自信ありげにそう言った。
僕が常にトップを走ることで独占していたはずの貴方。
成績も、仕草も、容姿も。
全ての努力は、貴方の為だった。
ねえ、先生、届いてますか。
僕のこの想い。
お願い、届いていて下さい。
他にワガママなんて言わないから。
せめて僕の気持ちを、わかって。
きっとこれが、僕の最初で最後の、恋。