短編
□僕の好きな人。
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僕の彼氏は、ちょっとだけ変わっています。
「……何してんの、真一」
昼休み、待ち合わせ場所に行く途中で待ち合わせているはずのその人がしゃがみ込んでいるのを見つけた。
待ち合わせ場所はここじゃないよなぁと思いながら、声をかける。
「…毛虫…」
「……は?」
ぽつりと呟かれた言葉の意味を分かりかねて聞き返すと、ほんの少しそれが補われる。
「毛虫って…生きてるんだよな…」
何だろう。
この人は、何が言いたいのだろう。
付き合って半年になるけど、この人のこういう所は未だに理解できない。
「たまに潰されてる奴、いるだろ?」
返事に困っていたら、不意に真一が立ち上がって言った。
足元にはどこかへ向かって移動する毛虫。
「毛虫…見てたの?」
聞かれたことには答えず、一生懸命に動くそれに視線を向ける。
「……うん」
そんな僕に真一はそっと抱き付く。
「きっとあいつらも潰される時は、人間みたいに痛いんだよな」
犬も猫も草も木も…毛虫だって人間と同じで、生きている。
「俺にはそんな痛み想像も付かないから、普段は気にもとめないけど」