短編
□僕の好きな人。恋心編
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―――……あれはいつものように、道端に咲いている小さな花に魅入っていて遅刻しそうになった時の事だった。
今日も新しい発見があった…なんて喜んでいる場合じゃない。
今日は朝からテストがある日。
遅刻常習犯の俺は、今日のこのテストを受けないと進級が危ない。
進級できないなんて、学校に行かせてくれている親に申し訳が立たない。
……と焦りつつも、ついつい真っ青な空を流れる雲に目を奪われてしまう。
(綺麗だなぁ…)
チチチ、と雀がさえずる音も、サワサワと木の枝を鳴らす風も、俺を包む全てのものが綺麗だと思う。
足早に目的地を目指していると、つい見落としがちなこの美しさ。これに気が付けない人は、なんてもったいないことをしているんだろうと常々思うんだ。
こうしてちょっと足を止めて目を閉じれば……。
「おい!門閉めるぞ!!」
ハッ!!!……しまった!
またやってしまった…!
「あぁぁっ、すみませんっ!!今行きます!」
予鈴と共に閉められる巨大な門。
そして俺はと言うと……。
「全く、毎日毎日同じ場所でぼけーっとして、何をしとるんだか……」
呆けるなら門をくぐってからにしろ、と体育教師に説教を食らった。
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