短編
□可愛すぎて。
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僕は藤谷蓮(ふじたに れん)、高校2年生です。
両親が外交官なので少し立派なマンションに住めるのは良いのですが、その変わり忙しい両親はあまり家に帰ってきません。
僕が高校に入ってからは、半年に一度帰ってくるか来ないかで。
そんな僕を心配してくれた隣の部屋のお兄さんが、両親に掛け合ってくれて僕の面倒をみてくれる事になったのが二年前。
以来一年のほとんどを僕はお兄さん宅で過ごしている。
ところで今、僕はとっても怒っています。
何故かと言うと、その隣に住んでいるお兄さんが原因なのですが…。
「…静也(しずや)さんッ」
ドアの開く音が聞こえて、僕は玄関に走り出す。
僕に出迎えられた静也さんは、仕事で疲れている筈なのにそれを微塵も感じさせない笑顔で言った。
「蓮、ただいま」
彼が僕の面倒をみてくれている岡本静也(おかもと しずや)さん。
27才のエリートサラリーマンで…僕の、恋人です。
彼がやたら幸せそうに言うから、僕は思わず怯んでしまった。
「うっ…お、お帰りなさい…」
僕はこの笑顔にやたら弱い。
だってカッコいいんだもん!
「今日はご飯、何食べようか」
脱いだスーツの上着をハンガーに掛けると、シャツのままですぐに台所へ向かう。