短編

□☆約束☆
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「……ひーくん、何これ……」

何もないリビングに呆然と佇んで、久志は思わずそう呟いた。尋ねられた久弥も何が起きているのかさっぱり解らなかったので、小さく頭を振ることしか出来ないでいる。
聞かずにはいられなかっただけで、先ほど同じタイミングで起きた同い年の兄が答えを知っているとは久志も思っていないので、それ以上の事は何も言わなかった。

今朝、いつもより騒がしい物音で久弥達は目が覚めた。
覚めたら、自分達が寝ている布団と着替え以外、部屋には何もなかった。

まだ夢を見ているのかとも思ったが、そうではないらしい。

部屋の外から聞こえる騒がしい人の声に、久弥と久志は顔を見合わせると、慌てて階段を降りていった。
勢いよくリビングのドアをあけると、「引っ越し会社キャリーマン」とロゴが入ったツナギを着たおじさん達が、丁度ベランダから冷蔵庫を運び出しているところだった。

それが最後の荷物だったのか、リビングには何も残っておらず、まるで知らない家のようだ。
二人でふらふらとリビングの真ん中まで行き、立ち尽くしていると、不意に後ろから声がした。

「あら二人共、やっと起きたの?」

「「お母さん!何これ!?」」

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