JUNK
□拍手短編
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鳥
なんでかなぁ……俺、こんなにあいつの事好きだったのかなぁ……。
全く、人生最後の時に思い出すのが親でも主君でもねぇ、あいつの顔だなんて。
「きっと帰るって、約束したんだけどな……」
あーあ、借りてきた金、返せねぇなぁ……。
そんな呑気な事を思いながら、そっと胸ポケットを探る。
直接返すから、と無理やり借りてきたワンコイン。
震える手で太陽にかざすと、キラリと光った。
「……鳥だ……」
人の争いなぞ素知らぬ顔で、鳥が旋回していた。
俺は高く高くコインを掲げる。
「鳥よ…我が心、伝えてくれぬか…」
あいつに、せめてこれだけでも。
あいつからたくさんのものをもらった俺が返せるものは、これしかないから。
「鳥よ……!」
瞬間、鳥は俺の手を掠めていった。
承知した、とばかりに俺の上を旋回し、彼方へと飛び立っていく。
「美しい空だ……見えているか、なぁ、友よ……」
雲一つ無い空を、あいつも見ているだろうか。
鳥に託したコインが無事届けばいいけれど。
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