FF7
□英雄に好きなものが出来ました。
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ぶーぶーと文句を言いながらまた一歩距離をとると、ようやくセフィロスの殺気が消える。
ちょっとどんだけなのこの人。
「あ、そうだ!それよりザックスにお願いがあったんだ!」
パッと花開くような笑顔で両手をパン、と鳴らすクラウドさん。
犯罪級に可愛い。
可愛いんだが、今の俺には地獄への誘いにしか見えないんですけど…!
ゴゴコゴゴ、と聞こえるはずもない音を鳴り響かせる般若の形相の英雄様の視線が痛い。
(エアリス、俺デート一回行けないかも…)
二人きりなんて贅沢は言わない。頼むから可愛いお願いは英雄様のいないところでしてもらえないだろうか。
「な、なぁクラウド、そのお願いって俺じゃなきゃダメかな?ほら、セフィロスとかさ!」
あわててフォローすると、若干英雄様のどす黒いオーラが和らぎ、ちょっと期待のこもった眼差しが見えた。
そんな英雄様を知ってか知らずか、クラウドは「んー」と人差し指を顎に当てて考える。
可愛いな〜とすさんだ心にオアシス的癒しを受けていると、バシバシと壁を叩く音が聞こえた。
片手で真っ赤な顔を覆い、身もだえる英雄様がいらっしゃった。
(ええー)
さすがにちょっと引いていると、クラウドがにっこり笑ってトドメの一発。
「セフィロスさんじゃ意味ないからザックスがいい」
ズガーン、と岩石が降ってきたかのような衝撃を受けたセフィロスは、悶えたままの格好でえぐえぐと泣いている。
これ本当に英雄か?
「ザックスザックス」
泣き崩れる英雄と呆れている俺に構わず、ちょいちょいと手をこまねき、クラウドは『お願い』を耳打ちした。
「クラウドお前それ……」
「えへへ〜、内緒ね!じゃあ後でね!」
すべていい終えると、バイバーイ、と手を降って来たとき同様にチョコボ頭を揺らして去っていく。
「あいつ可愛いトコあんなぁ」
うんうん、と一人頷いていれば、再び般若様が復活しなさった。
「ザアァックゥスうぅぅ〜」
クラウドの目がなくなった分、一層おどろおどろさせた空気を纏い般若様、もとい英雄様が地獄の底のような声で俺を呼ぶ。
「ああああは、ほ、ほらその、同室のよしみってやつ?」
笑って誤魔化そうにも顔がひきつって上手くいかない。