短編
□僕の好きな人。出会い編
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「風邪、引きますよ」
突然遮られた雨に驚いたのか、はたまた僕の声に驚いたのか。
彼は不思議なものを見るような目で僕を見下ろした。
あまりにじっと見つめてくるから、どうも居心地が悪い。
「余計なお世話でしたか……って、あれ?」
やっぱり自殺志願者だったのかと思い、にわかに皮肉交じりに言ってからふと気がつく。
この顔、どこかで見たような?
よくよく見れば彼が着ているのはうちの学ランだ。
「もしかして、隣のクラスの人?」
そうだ、思い出した。
彼はうちの学校きっての変わり者だと有名な人だ。
間近で見るのは初めてだ。
確か名前は……。
「真一く…んぅっ?」
名前を呼んだ瞬間、突然のキス。
なんの前触れもなかったその出来事に、当然僕の頭は真っ白で。
「ん…むぅ…っ……ぷはっ」
両側から頬を抑えられ、なんの抵抗も出来ずにされるがままになっていたのが、やっと離されて。
「な…え、ちょっ…えぇ?」
訳が分からず大混乱している僕に彼が一言。
「ファーストキスってやっぱりレモン味じゃないのか……」