短編
□可愛すぎて。
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殺人的な味がするらしい僕の料理を食べて以来、静也さんは帰ってくるとこうしてすぐに夕飯に取り掛かってくれる。
さすがに悪いと思い何度か手伝おうとしたけど、その都度必死に止められるので、今は大人しく作って貰うことにしている。
「あ!ハンバーグがいいですっ!」
静也さんの作ってくれるハンバーグが大好きな僕は、2週間に一度は必ずこれをリクエストする。
「ん、オッケー。今作るからね」
ニコニコ笑って台所に立つ静也さんに、僕も自然と顔が緩む。
「やった!……って、違いますっ!」
素直に喜び掛けて、僕は忘れていた事を思い出した。
そうだった、僕は怒っていたんだった…。
「……ハンバーグじゃない方がいいの?」
「!!ハンバーグはいいんです!ご飯の事じゃなくて、コレ!」
的外れな事を言う静也さんに僕は憤慨すると、おもむろに着ていたシャツをはだけた。
そこにあったのは真っ白な僕の胸板に薔薇の花びらが散りばめられたような、大量のキスマーク。
「今日の体育、着替えるの大変だったんですから!」
着替えようとシャツのボタンを外しかけた時にちらりと見えて、初めて気がついた。
友達に気付かれないように着替えるのは本当に一苦労だったのだ。