『空っぽの心情』

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入学式前の雷門中。

入学式だと言うのに、そこに広がる光景は、到底入学式前の雰囲気にはほど遠い。

サッカー煉。

そこで行われる試合に、客席の生徒は目を見張っていた。

前半が終了し、得点板に刻まれる数字は、10‐0。

サッカー名門校である雷門が、1点もとれずに、前半を終了させた。

相手は、突如現れた、新入生剣城京介率いる『黒の騎士団』。

一方的な試合に、メンバーも驚愕している。

急に試合に出された、松風天馬も、同じだった。

そんな中、始まる後半戦。

キャプテン神童はボールを奪おうと、剣城にスライディングをかける。

剣城はそれをよけ、神童はそのまま倒れた。

剣城の挑発的な言葉に、神童は再び向かっていくが、神童は身を翻し、またよける。

「諦めたらどうだ?お前たちはお払い箱なんだよ。」

剣城の放つボールは、メンバーを傷つけ、ゴールを射抜くがごとく、シュートを決める。

「俺たちに勝つことなどありえない。お前たちのサッカー部は終わりなんだよ。」

「…終わり…?」

剣城の言葉が神童を追い詰めていく。

…本当にこのまま終わってしまうのか?

このまま、なすすべもなく…。

「サッカー部は終わらない。」

その言葉に、神童はハッとし、顔を上げる。

「雷門サッカー部は誰にも渡さない!絶対に!!」

天馬の妙に堂々とした覚悟のある言葉。

剣城には、それが勘にさわったらしい。

「じゃあ、奪ってやるよ!!」

表情を険しくし、剣城は雷門メンバーを傷つけ、点数を重ねていく。

目を背けたくなるほど、酷い光景。

メンバーは、神童と天馬を残し、全員倒れてしまった。

「理解できたか?お前が憧れている雷門は所詮この程度だ。」

笑いながら、剣城は天馬に言い放つ。

状況は、絶望的と言っても過言ではない。

メンバーの1人である水森が戦意を喪失し、フィールドから出てしまう。

神童が何度呼ぼうが戻って来ない。

「…クソッ!このままじゃみんな、潰される…!!」

一方的な試合。

立ち去る仲間。

傷つくメンバー。

神童は、どうしたらいいかわからず、ただ立ち尽くしていた。

剣城は愉快そうに笑う。

まさに、絶体絶命のこの状況。

…そのときだった。

「…キャプテンがそんなんでどうするんですか、先輩。」

けして、大きくも小さくもない声がサッカー煉に響く。





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