『空っぽの心情』

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黒の騎士団からのスローインから再開した試合。

外からパスされたボールをまわさせまいと、雨宮は素早くパスをカットする。

「松風。」

雨宮はパスをすぐ天馬にまわした。

パスを受け取った天馬は、再びドリブルで進む。

またある程度してから、雨宮にボールをまわすつもりだったが、そう何度も上手くいかない。

天馬はあっという間に黒の騎士団メンバーに囲まれてしまった。

隙をみて抜けようともしたが、どうやら無理らしい。

「松風天馬。」

剣城は天馬に近づいていく。

けして強く言ったわけでもないのに、その声には言い知れぬ威圧感があった。

「その顔、気にくわねぇ!くだらねぇんだよ、サッカーなんて!!」

剣城の羽織っている学ランがはためく。

…刹那、剣城の後ろに現れる影。

全員が目を見張った。

信じられない光景。

あれが…。

「化身…!?」

神童が、そう漏らす。

都市伝説で噂される『化身』。

それが今、自分たちの前に現れているのか…!?

剣城の影は、その姿を徐々にはっきりさせていった。

左腕の剣。

右腕の盾。

鎧を纏う、剣士のような姿。

「これが俺の化身。『剣聖ランスロット』だ。」

…化身は、人の気がより高まり、現れるものだと言われている。

目の前の信じがたい光景に、驚きを隠せない。

「ありゃなんだ…!?」

「本当にいたんだ、化身使い…!!」

「都市伝説じゃなかったのか!?」

口々に言うメンバーたち。

それを目の前にして天馬は驚ことしかできない。

「驚くのはまだ早いぜ!」

剣城が天馬に向かっていく。

背後の化身と剣城の動きが連動し、天馬に襲いかかった。

天馬を傷つけ、突破する剣城。

そのまま跳ね飛ばされる天馬。

倒れても、天馬は立ち上がり、剣城からボールを奪おうと必死になる。

「こんなのサッカーじゃありません!やめさせてください!!」

春奈は久遠にそう訴える。

「駄目です。」

久遠と春奈は振り向く。

「まだ試合は終わっていません。」

黒木が、どこか楽しげに、そう言った。

…これで何度目か、天馬が、また倒される。

何度も倒され、立ち上がり、流石に限界が近いだろう。

剣城は笑い、天馬に近づいていく。

しかし、そこに1つの人影が立ちふさがった。




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