『空っぽの心情』
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…暫く、沈黙が続いた。
太陽は既に西に傾いており、茜色の光は、橋の上にいる3者を照らす。
常に無表情だった筈の雨宮は、目の前の少年を睨み続けていた。
その目には、怒りとは別の、焦りや恐怖に近い感情を映している。
「…何しにきた…!何故、お前がこんな所にいるんだ!」
拳を強く握って、磯崎に問う雨宮。
そんな雨宮は打って変わり、磯崎はフッと微かに笑って足を進める。
「…なんだよ。久し振りの再会だって言うのにつれねぇなぁ…。幼なじみのよしみで、わざわざ挨拶しに来てやったのにさぁ。」
「挨拶…?」
「聞いてねぇのか?次の雷門の対戦相手、俺らだっていうの。」
わけがわからないとでも言いたげに、雨宮はじっと磯崎を見据え、目を離さない。
そんな雨宮を見て、磯崎は呆れたように溜め息をついた。
「…『万能坂中』。」
静かに磯崎が発した言葉。
雨宮は戸惑いを隠せず、大きく目を見開く。
「な、にを…!?」
磯崎がわざとらしく肩をすくめ、キョドって見れば、無意識に力の入る雨宮の拳。
「…万能坂は、フィフスセクターの支配下にある、高い技術を持った"潰しのチーム"じゃないか…!!」
「あぁ…。陰じゃそんなこと言われているらしいな。」
『関係ねぇけど』と言ってつまらなそうに目を細める磯崎。
「なんで、なんでそんなチームにお前が属しているんだ!あのチームの噂を知っていて…!わざわざどうして…!!」
「…"俺の"チームだ。」
ニタリと皮肉混じった笑みを見せる磯崎。
「俺は万能坂のキャプテン、シードの磯崎研磨。」
雨宮は血液が逆流するような感覚に襲われた。
聞き間違いであって欲しいと思ったが、世の中そんな都合のいいことがある筈ない。
確信のある磯崎の言葉に雨宮はなすすべもなく、両の拳を怒りに震わせる。
「、お前は…!お前は自分のしたことがわかっているのか!!」
磯崎に対し、感情のまま怒鳴り散らす雨宮。
「勝負指示に従い、ただ組織の思い通りに動く腐敗したサッカー…!それが僕たちが目指したサッカーか!?昔のように、みんなで笑って楽しかったあのサッカーが僕たちのサッカーじゃなかったのか!?どうしてお前は、そんな風になってしまったんだ!答えろ研磨!!」
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