□第一章 第一話:私のありきたりな日常。
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『ふぁ〜っ…眠い…』


もう真夏に近い7月の朝。
学校に向かうために乗る電車には人が沢山いた。
その中でなんとか座ることが出来た私は何をするわけでもなく、ボーッと、昨日の夜に放送されていたアニメを思い出していた。


(昨日のは良かったなぁ。剣城くんデレたし、倉間くんもデレたのかな?いや、デレたんだよあれは。浜野くん可愛いし速水くんも可愛いし神童くんも蘭丸くんも…。三年生も良かったなぁ。必殺技は…笑。一年生も頑張ってたし、もうみんな大好きだぁ)


つい緩みそうになっていた頬を元に戻し、いつものような無表情を作る。
私はあまり感情を外に出さない。
というか、出したくない。
他人を信用していない、とよく人に言われるがその通り。
信用なんて誰がしますかこのアホんダラ。
信用している人なんて、一人や二人で十分じゃないか。
そう思って生きてきて損した覚えもないし。
高校一年生が何言ってるんだ、て?
ほっとけバカ。
それにいない訳じゃないのだから。


「おっはよーすっ!」

『うわっ!び、びっくりした…』

「やったー♪作戦成功!あたしってば…天才?」

『はいはい』


電車を降り、改札を出た瞬間にコレとは…今日もいつも通り平和な証拠か。
さて、飛び付いてきた彼女こそ、私が学校の中で唯一信用し、信頼している琴音ちゃん。
中学からの付き合いで今年はクラスが違うけど、これ程までに気が合う人はいないだろう。
私が外面では消極的な態度をとるのに対し、彼女はとても積極的でなんだかんだクラスにお友達もいるらしい。
いや、私も友達が少ないわけではないのだよ。
上部っツラだけの友達ならいるさ。
私は友達とも思っていないがな。


「さてさて絵理ちゃん。昨日のイナGO観たよね!もちろん!」

『当たり前じゃん!ヤバかったね!』

「マジテレビの前で叫んだ!なにあの浜野くんの笑顔!半端ないんですけどぉぉお!あたしをキュン死にさせる気か!?」

『あの浜野くんは良かったね!剣城もデレたし…スタッフ神!あっねぇ、あの倉間くんはデレたと思う?』

「あったりまえじゃん!ああもうみんな愛してる」

『同感』


こんな私達の会話からわかるように、私達はイナズマイレブンGOが好きで好きで堪らない。
いや、愛しているさなによりも。
イナズマイレブンから変わったときに抵抗も反発もしたが…今では毎週放送時間五分前には、テレビの前で正座をして待っている。


「でもさぁ、やっぱ寂しいよね」

『ん?』

「南沢さん。なんで退部しちゃったんだよ、って感じじゃない?特に絵理ちゃんはさぁ、南沢さん愛してんじゃん」


つい最近退部してしまった南沢さん。
私の最愛の人。
ああ…どうして退部してしまったの…(泣)


『もう闇落ちでもなんでもいいから帰ってきて欲しい…』

「えっ、闇丸みたいになってもいいの?笑」

『闇なみ沢でもいい…!』

「重症だねぇ〜(笑)」


もうなんでもいいさ。
南沢さんが闇丸鬱太郎のようになったとしても…また南沢さんのエロフェイスエロボイスが聞けるなら!


「そう気落ちするでない。新キャラはまだまだ出てくるさ」

『やだ…南沢さんがいい…』

「あはははは…あ〜ぁ(笑)」

『もう自分で絵を描いて和むしかない』

「そーしなそーしな。あたしも絵理ちゃんの為に南沢さんの夢小説でも書いてあげるから」

『それに絵つけてもいい?』

「もち!相手の女の子の名前のところ、特別に【絵理】にしといたるわ!」

『さんきゅ〜!』

「んじゃ、ばあ〜い!」

『うん、じゃぁね』


二人で話ながら歩いているといつもこうだ。
気付いたら教室の前まで来ている。
登校時間ギリギリな私達は直ぐに席に着かなくちゃいけないから…。
くそ、まだ話したいことあったのに…!
まだダッシュトレイン(笑)について話してないのに!
ああヤバい、興奮して汗が止まんない!


「あ、絵理ちゃんおはよう」

『おはよう』

「今日体育あるね。がんばろうね!」

『うん』

(なにががんばろうねだ偉そうに。話しかけるなウゼェ)


なんか一瞬にして汗が引いた気がするわ。
ああなんて腹のなか真っ黒なのかしら私。
この隣の席の女、バカだから嫌いだ。
私と仲良しとでも思ってるの?
勘違いもいい加減にして欲しいなぁ。
私はアンタが大っ嫌いなんだよブヮァカ!
今日も憂鬱な一日が始まるのか…。
まぁいいや。
私の今日の予定は先生に見つからないようにいかにして、授業中に南沢さんを書くかだ。
ついでに琴音ちゃんのために浜野くんも書こう。
あっ、速水くんもいいねぇ♪
南沢さんの横には倉間くんかな?
ああ…妄想って楽しいなぁ。
あとは、隣のバカ女に話しかけられないように一日を過ごせば完璧だ!
 

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