文章

□嫉妬
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文次郎side

「立花センパーイ!」

…チクリ

ああ、まただ。

俺、潮江文次郎は最近何故か気分がおかしい。

六年間同室で、同じ組、そして、恋仲でもある立花仙蔵がくのたまやおなごに話しかけられたり、貰い物を受け取ったりしているのを見るたびに、胸がチクリと痛むのだ。
今も会計室に行こうとする途中で、その場面を見てしまってまた胸がチクリとした。
(いったい何なんだ?)
一人で首を傾げて廊下に佇んでいると、不意に肩を叩かれて振り返ると、そこには図書室に向かう途中なのか、本を片手に俺を見下ろしている六年ろ組の中在家長次が立っていた。
「……こんな所でどうしたんだ?文次郎」
「長次か。いや、仙蔵はモテるなぁっと、思ってな。」
仙蔵の方を見て指さすと、頬を染めて仙蔵に話しかけるくのたまと、にこやかに話している仙蔵を見た途端に、またチクリと痛んで、自分の胸を押さえた。
「……文次郎は無自覚だな。」
「は?無自覚?」
「……あぁ、それも分かり易いのに分からないところ、がだ。」
「?」
「……分からないのなら自分の此処に聞け。」
長次は俺の胸あたりをトンっと軽く押したかと思うと、図書室へ行ってしまった。

「…一体何なんだ?」

その後、この感情が分かってどうなったかは……また別の話。


終わり
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