■小説1

□飼育する愛
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題:「飼育する愛」
  (注:性的表現有り)
  [其の弐]
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地下特別檻理棟−通称「蛆虫の巣」は、護廷隊内の危険分子の収檻施設である。
二番隊隊舎の北西に位置し、周囲は幅三十間の堀で厳重に取り囲まれていて、逃げる事は叶わない場所である。
今日もまたその魔窟に新しく危険分子と称される人物が収容されようとしていた。

連れて来られたのは、目の覚める程の鮮やかな蒼髪と見る角度により変わる不思議な琥珀色の瞳の持ち主。それだけで誰と判る人物は、涅マユリその人である。

ただ数年前と違った点は、全身に白子のような化粧を施しており、耳も長い突起物が付けられ、美しい筈の目の周りには黒く隈取りをされている。それは一種異様な雰囲気である。
ここで一言説明するが、マユリが自身にこのような化粧を施しだしたのは、数年前の浦原からのあの「告白」の直後からであった。
それまで優秀な期待の新人と言われていたマユリの余りの変わり様に、周りはおかしくなったのでは、と色々噂し気色ばんだ。告白後も幾度か姿を見せた浦原ですらマユリのその変容ぶりに驚き、ただ哀しい瞳でマユリを見詰めるだけであったのだ。

そして今またマユリの前に、その浦原が現れた。二番隊部隊長であり、看守でもある浦原喜助は、今後入牢するであろうマユリを檻理する立場であったからだ。
浦原は、書類を巡ると捕縛されて来たマユリに視線を合わせ、その場に似つかわぬ笑みを浮かべた。

「お久しぶりです、涅…マユリさん」

マユリは正面を向いてはいたが、その目は浦原を映しているかも分からぬ程無表情であった。

「貴方には、特別危険な人物って事で、地下独房へ入って頂きます。申し訳ありませんが」

浦原は、マユリの後ろを歩き出した。数人の隊員に連れられて手枷をされたマユリは従順に浦原の前を歩いていく。

連れて行かれたのは、意外にも風呂場であった。直ぐ独房に入れられると思っていたマユリは怪訝な顔をして浦原を見る。隊員達は浦原の指図で帰され、マユリは手枷を外される事となった。今風呂場の脱衣所では、マユリと浦原の二人だけになっている。

「服を脱いで、そこに立ってください」

浦原に言われて、マユリはぎょっとした。自分は数年前、浦原に告白されている。浦原の気持ち次第では何をされるか分からぬと、マユリは酷く警戒した。そんなマユリの不安げな大きな瞳に見詰められた浦原であるが、些かも表情を変える事無くマユリに言葉を掛けるのであった。

「ああ、心配しなくても大丈夫です。簡単な身体検査ですよ。危険物を持ち込まれたらいけませんからね。あ、下着も全部取ってください」

浦原に言われてマユリはゆっくりと襦袢を脱いだ。下着すら取り全裸になると、それを浦原が一通り目視で確認する。

「あちらに座ってみてください」

目の前にある椅子を指差されて、マユリは言われた通り裸のままそこに座った。

「脚を上げて、拡げて貰えますかね?」

「なんッ…?!」

どういう事かとマユリは眉間に皺を寄せた。大概の事は理解していたが、このような行為を強要される等と予想外である。浦原はそんなマユリに気付いたが、笑みを湛えたままマユリの無言の抗議を切り捨てた。

「危険物の持ち込みが無いかの身体検査だと言ったでしょう?何処に何が隠されているか分かりませんから、ね」

マユリは渋々と脚を上げ開いていく。三角座りで脚を開いた形状だ。これで、全てが丸見えとなり、マユリの恥部は浦原の目の前に曝される事となった。これにはさすがのマユリも顔を横に背けてしまう。

「失礼します…」

そうして見えたマユリの蕾に浦原の指が触れてくると、マユリは驚いて声にならない声をあげたのである。

「ヒイッ!な、なにをッ!?」

「中に入ってないか確認してるんスよ」

浦原の指はマユリの蕾にずぶずぶと躊躇わず挿入された。初めは中指でくりくりと掻き回したかと思うと、指を二本に増やし奥まった所まで、ぐぐっと突いて来る。
マユリは唇を噛み締めて、痛みと恥辱に耐えていた。

−どうしてこのような事になってしまったのか…−
マユリは思考を巡らせた。

数年前、浦原の勧誘を断ったマユリは、二番隊でない隊に入隊した。だが、本来勉学気質であったマユリは隊員としての毎日に直ぐに物足りなさを感じ、退屈で嫌になっていった。やがて自室で研究や実験を始めるようになり、その行為は日々エスカレートしていく事となったのである。そして、秘密裏に死神の解剖を致そうとした所へ檻理隊により捕縛されてしまったのである。
よくもまぁ絶妙なタイミングであると言えよう。後で聞いた話によると、何者かが無記名の投書により密告してきたらしかった。
各様にしてマユリは捕縛され、今看守である浦原に身体検査を受けているのであった。

「終わりましたよ」

浦原の指が抜かれてマユリは全身の緊張を解き脱力した。酷い屈辱だ、とマユリは心の中で散々悪態をついた。
浦原は懐から書類を取り出すと何やら一筆書き、またそれを懐に戻した。

「これで、検査は終了しました。では今から風呂に入って貰い、その後入牢という運びとなりますので」

言い終えるとマユリに風呂桶と手ぬぐいを渡し、浦原はがらりと風呂場の扉を開けた。マユリは既に裸であった為、そのまま風呂場に入っていく。
だがどうした事か、浦原は風呂場の外に出ず数歩程中に入ると、ぴしゃりと出入り口を閉めてしまった。再び訝しむマユリに「何かあったらいけないので」と口にして浦原はマユリの方を見ているのである。

−風呂すら一人で入る事は赦されないのかネ…−

マユリは溜め息をつくとシャワーのコックを捻り、全身に施された化粧を落としていく。石鹸を泡立てごしごしと身体を擦るマユリの姿を、離れた位置から熱い目で浦原は見詰めていたのである。
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[其の参へ続く]
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