■小説1

□大和撫子七変化
2ページ/2ページ

題:「大和撫子七変化」
  [其の弐]
−−−−−−−−−−−
【白(ましろ)】:うっそぉ…それって…

【リサ】:所謂『BL』つうヤツやな。最近漸く世間に浸透しつつある。

【ひよ里】:なんやァ『びーえる』て?

【リサ】:『BL』…ボーイズラブの略で、男同士の恋愛のこと。つまり浦原と涅は『そういった関係』と見たで。で、こういったのを好きなのが『腐女子』つう女子どもや。しかし、まぁ腐女子受けがいいのは美形同士が一般的やからな。喜助は、まぁ、あんなんやけど見掛けはええからな。せやけどマユリの方は…

【ネム】:マユリ様はお美しいです。

【乱菊】:そうなの!?

【ひよ里】:ああ。ウチも見た事あるで、マユリの素っぴん。マユリのヤツ、ほら普段からああいった妙な化粧しとるやろ。やけん初めて見た時は余りの落差に驚いたわ。確かにエライ『美形』やけど…あの性格やさかい女子供にはモテへんやろうなァ。

【ネム】:……。

【ひよ里】:やからて、男にモテてどないすんねん。喜助のヤツも…ずっとマユリの尻追い掛けよったんは、こういう事やったんか。

【リサ】:まぁ、今どき『自由恋愛』やさかいなァ。こうした事も無きにしもあらずや。所で一つ、あんたに聞きたいねんけど…浦原とマユリ、どっちが上でどっちが下なんや?

【七緒】:そっ、そんな事…聞く必要…

【リサ】:あるで。どっちが『攻』でどっちが『受』かっちゅうんは重要や。ウチは『エロ』に重点を置いて生活しとるさかい、BLにもちょっと煩いんや。で…どうなん?

【ネム】:浦原様が上で、マユリ様が下です。

【七緒】:ちょ、っ…ネムさんッ!?そんなにキチンと答えなくてもッ!義務じゃないんですから!

【乱菊】:ひえぇぇッ!涅隊長が下なのぉ!?意外〜!!

【リサ】:否、そうでも無いで。涅の場合は、あの性格…所謂『ツンデレ』や。『ツンデレ受』てのは、腐女子には結構浸透しとる分野やで。王道っつう訳にはイカンけど、一部には物凄ぅ受けたりするんや。あー、なんやこんな話しとると二人の『夜の営み』見とうなってしもてアカンなァ。秘密の関係てトコが、こうエロ心を擽るねん。隠されとるモン見てみたくなるんは正に心理やさかいな。

【乱菊】:ね!その腐女子って尸魂界にもいたりする?

【リサ】:おるで。大体女が純情可憐なんて、男が作った幻想や。エロが好きな女子なんて隠れた所に仰山おるやろ。

【乱菊】:ふぅん…よし!じゃあ次の『瀞霊廷通信』は『BL』の特集記事にけってーい!何かいい企画無いですか?って前から修兵に頼まれてたのよォ。事実として、浦原さんと涅隊長のカップリングを例に挙げたりしたら、その腐女子心を掴んで結構イケるかもォ。

【ネム】:マユリ様の名前を出す事は赦されません。それにマユリ様は『通信』を隅々まで読まれる方なので、バレてしまう事は必至です。

【乱菊】:大丈夫よォ。名前はイニシャルとかで伏せるようにしとくからぁ。『美形』二人の禁じられた愛…なーんて、別にソッチに興味無くても気になるもんよ。大体、凄いスクープじゃない!!最近『通信』の売上が下がって、修兵落ち込んでたから。これで沢山売れたら、万々歳じゃないの!!こうしちゃいられない!アタシ修兵のとこ行って来る!!

【七緒】:え!?行く、って…『雛祭り』はどうするんですかっ!?それにあまり出入りしてると朽木隊長に見られたら!?

【乱菊】:悪いけど私今日はこれで抜ける事にする。大丈夫。朽木隊長にはバレ無いよう、こっそり出てくから。じゃあ、後は皆で楽しんでて。

【七緒】:あ、乱菊さん、っ!?
−−−−−−−−−−−
かくして。
乱菊が思い立ち、嫌がる修兵を説き伏せて進められた『BL特集』は、予想通り恐ろしい程に良く売れた。そして、この企画が掲載された『瀞霊廷通信』がマユリの手元へと届いたのは、この雛祭りより一週間後の事となる。

その夜。こちらは研究棟内、マユリの自室。

【浦原】:マーユーリさァん。アタシまた今晩も来ちゃいましたァ。ハァ、なんでしょうかねェ、マユリさんの顔見ないと一日が終わらないって言うんですか。ついつい足がこちらの方に…て、何読んでるんスかァ?難しい顔しちゃって。マユリさん、眉間に皺寄っちゃってますよォ。

【涅】:……。

【浦原】:…マユリさん?

【涅】:う、うらはら…こ、こ、此は一体どういう事だネッ!?貴様まさか私との事、誰かに吹聴したりしていないだろうネッ!?

マユリから投げ付けられるように渡されたのは、例の記事が掲載されている『瀞霊廷通信』。

【浦原】:ん?なんっスかァ…『通信』じゃあないですか。なになに『BL特集』。瀞霊廷を揺るがす、美しくも切ない男達の愛。元隊長UとK隊長−美形同士の禁じられた遠距離恋愛。追放されていた元隊長U氏は夜ごとK隊長の部屋へと通い…って。エエッ!?これ、ッ!?

【涅】:どういう事か説明し給エ。

【浦原】:し、知りませんよォ。大体アタシがそんな事する訳無いじゃあないスかァ。ね、信じて、マユリさん。

【涅】:信じられるかネッ!?貴様はどうしてこうも口が軽いんだヨッ!昔から何かとべらべらと、ッ。大体私達の事を知る者など、他にいないじゃあないかネッ!貴様以外考えられぬヨ!

【浦原】:だから、違いますって。んー、でもこの際いい機会ですから、きちんと公表して認めて貰いましょうよ。マユリさんとならアタシ、添い遂げる自信ありますッ!

【涅】:ばッ、何言って、ッ!?ム…そうか、そういう事かネ。浦原、貴様自分でリークしておきながら、そう言って上手く事を運ぶ気だロウ。フン、その手には乗らないヨ。

【浦原】:エ?違います、って。

【涅】:この後に及んでまだ言い訳かネッ!?見苦しいヨ、浦原。貴様とは『絶交』だッ!ほとぼりが冷めるまで…此処へも来るんじゃあ無いヨッ!!

【浦原】:ちが、ッ!マユリさんッッ!?ええ、ッ!?

こうして。日頃の行いが悪いとは言え、マユリに妙な誤解を受けた浦原は、哀れにも『絶交』を言い渡される事となった。落ち込む浦原。

尚、イニシャルKの現隊長は、朽木、狛村、京楽、涅の四名。『通信』で美形と称されていた事から、例のU氏の相手は何故か『六番隊隊長、朽木白哉』では?との噂が立ち、その後も色々と瀞霊廷を巻き込む騒ぎとなった。が、これも後の話である。

何様にして。今は一人寝室にて眠るマユリ。
そんなマユリを愛おしげにそっと物影より見詰める人物。その唇は、にこりと不敵にも満足気な笑みを漏らしていた。

【ネム】:マユリ様は、私だけのモノです。
−−−−−−−−−−−
[終.2012.03.02]
結局の所、一番思惑通りになったのはネムちゃんであったという。ウチには珍しく女の子メインのお話^^;浦原とマユリの二人は…まぁマユリも「ほとぼりが冷めるまで」と言っているので。「ほとぼりが冷め」たら、またくっつくのですよ、このバカップルf^ー^;
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ