■小説1

□下剋上ペット
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題:「下剋上ペット」
  [其の参]
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「アハ。マユリさん呼びましたァ?」

「な、ななな、ッ…!?」

突然目の前に現れた、マユリの恋人である浦原。その姿は一糸纏わぬ全裸であるのだが。布団を背に被った上にて正座し、普段と何ら変わらず頭を掻き只へらへらと、安穏たる笑みを漏らしているのである。
故にマユリは驚愕し、あんぐりと口を開けたままの状態となった。
と、ハッと我に返るマユリ。

「う、う、浦原ァッ!此は一体どういう事だネッ!?エエッ!?説明し給えヨッ!!」

あの『キスケ』は浦原であった。その現実を漸く受け入れたマユリの矛先は、当然目の前の恋人へと向けられる。
やがて浦原はマユリから渡された新しい寝巻替わりの白い単衣を身に着けた上、罰が悪そうに頭を掻きながら、今回の騒動の事と次第を詳細に話し始めたのであった。

「あれは…アタシが商店奥の自室で研究してた時に起こったんスけど…」

浦原の話はこうである。
現世の自室にてある物質の研究をしていた浦原。幾日も寝ずに作業をしていた浦原は睡魔に襲われ、ふとした拍子に薬液を床へと大量に落下させてしまった。と、その時煙が立ち込め、気付くと浦原は猫の姿へと変貌していたのだった。

救いであったのは、その時、遊びに来ていた四楓院夜一が、傍らに居た事であった。元々猫の姿であった夜一には、例の薬液による煙に何の反応も見られず。夜一は気を利かし、マユリの元へと猫となった浦原を届ける事にしたのである。手紙は浦原の筆跡を真似て夜一が書いたものであった。浦原からは常日頃、マユリの誕生日の話は聞いていたし、プレゼントと称してマユリの元へ送り届ける事は最善であると思われた。何よりマユリは科学者である。猫となった浦原に万一何かあった時、即座に対応出来るのではないかと考え、その存在をマユリへと託したのが一番の理由であった。
浦原の話は可様な物であった。

「…可笑しいではないかネ?」

「ヘ?」

「どうにも話の辻褄が合わないヨ。それならそうと事実を私に話せば早い事だろう?大体その方がすんなりと解決したと思うがネ。何故それをしなかったのかネ、あの女は…」

「ああ、ハハッ…な、なんででしょうかねェ」

急におどおどと落ち着かぬ様子になる浦原。

「浦原。…貴様、仕組んだネ」

ぎろり、と浦原を見据えるマユリ。マユリの飴色の澄んだ瞳で見詰められ、浦原は漸く観念したようである。

「も、申し訳無いっス。つい出来心で。否、実験の失敗でこうなったのはホントなんスけど。実は人型から猫になる時に多少考える時間がありまして…で、どうせなら猫の状態でマユリさんに会いたいと思い立ちまして。猫の姿なら…誰憚る事無く、いつでも、ずっとマユリさんと一緒にいれるでしょ?だから…」

だから側に居た夜一に無理矢理頼み込み、猫の姿の浦原自身を、はるばる尸魂界のマユリの元へと届けて貰った、と言うのが真相であるようだ。

「ハァ…詰まる所、自分の一番身近にストーカー紛いの存在が居た、と言う訳か」

「そ、そんな、ッ…酷いッ!でも。今日という日…貴方の誕生日に人型に戻れるなんて。それもマユリさんがアタシの名前を呼んだ時に、っスよォ。凄い奇跡っス!まさに『愛の力』だと思いませんか?二人の愛が起こした奇跡…そうとしか考えられないっスよォ」

「馬鹿を言い給エ。よくもそう自分に都合良く考えられる物だヨ。只単に偶然その時、薬の効果が切れただけの話だ」

「マユリさん…ロマンチックじゃ無いっス」

「ふざけるのも大概にし給えヨ。大体この一週間、一向に連絡も取れず。私がどれだけ心配したと…」

「マユ、リさん…」

フイと外方を向き、目線を逸らすマユリ。怒っているのかと思いきや、さも非ず。マユリの瞳には何やら光るモノがあり、それが美しく長い藍色の睫毛を濡らしているのだった。
浦原はそれに気付き、反射的にマユリを掻き抱いた。その腕にぎゅっと力を込める。

「すみ、ませ…心配、掛けちゃいました。赦してください。マユリ、さん…」

じわり、と浦原の瞳にも熱いモノが滲んで来る。

実験の失敗とは言え、猫の姿となった自分。深く考えずこれ幸いとばかり、愛するマユリの側に居れる事を喜んだ。その事でマユリが不安になったり傷付く事など、思いも寄らなかった。
浦原はマユリに済まない気持ちで一杯となる。そして、その分よりマユリを堪らなく愛おしく思えてしまう。

そのままマユリを寝台へと押し倒し、激しく唇を奪った浦原。
既に浦原は欲情していた。猫の状態であった時ですら、身を寄せて眠るマユリの色香に我慢ならず、浦原は思わずその身体を舌先にて愛撫してしまった程だ。それはマユリとて同様であるようで。
浦原を言葉では詰りながらも、その腕の中にて既に甘く身を蕩けさせている。何しろ互いに此処暫くの間シていないのである。身体の芯から疼くような情欲が湧いて、もはや抗う事など出来そうも無いのである。

浦原の長い舌にて咥内を隅々まで探られ、マユリは陶酔した。くちゅくちゅと舌を絡ませると、触れ合ったそこから溶けて一つになってしまうかと思える程だ。互いの唾液は舌先にて掻き回され、とろりと蜜のように甘美に入り交じった。それを愛おし気に飲み込み、マユリの舌先をチュウチュウと吸う浦原は、淫靡だがひたむきで。まるで初な子供のようでもある。

惜しみながら唇を外した後、浦原の絖った舌先はマユリの白い身体へと這わされた。折れそうな程に華奢な首の筋を辿り、肋骨の浮き出た薄い胸元へと行き着くと、尖った舌先は小さな突起をまさぐり始める。桜色をしたやわい突起は浦原に舐められると直ぐに反応し、ツンと硬くなり上を向いた。

それを片手で摘み、くにくにと弄くると「あ、あ…」とマユリは声を漏らす。感じ始めている証拠だ。いずれは甘い嬌声を上げる。浦原はそれが嬉しくてならぬ。マユリが段々と自分のモノとなっていく様が、この上無く愛おしいのだ。

突起を濡れた舌先にて愛撫しつつ、マユリの白い単衣の腰紐に手を掛けた浦原。器用に横になったままのマユリの身体から衣を剥がし、裸に剥いた。
それからもどかし気に自身の単衣を脱ぎ捨て、マユリの脚を肩へ抱え上げ、再びその身体へと覆い被さった浦原。
そして、精悍な浦原の身体にのし掛かられ、折り曲げられてマユリは呻いた。苦しいからではない。押し拡げていたマユリの白い腿の間。薄色の蕾へと宛がわれていた浦原の猛った肉棒が、マユリのナカへずぶりと入って来たからであった。

熱く拍動する浦原のモノがマユリの中心へと突き立てられ、ゆっくりと出し入れされる。それはやがて律動的となり、マユリの奥に甘い快楽を刻んでいく。湧き上がる甘美な悦びは、そこから全身を廻る。浦原の硬いモノに幾度も突かれ、掻き回されて、溜まらずマユリの腿はヒクンヒクンと痙攣した。

「あッ、あッ…うらはらァ…イ、イッ…」

「ハァ、ハァッ…ああッ、好き…マユリ、さんッ」

浦原が動く度、ぐっちゅぐっちゅと合わさった部分から、卑猥なぬかるみの音が漏れ聞こえる。隆起した浦原のモノはマユリの最奥を突く。突いて、突いて、突きまくる。

「あ、ヒィ…うらはら、ッ…変になるぅ…ッ…もう…駄目、…ッ」

マユリの声は既に啜り泣きに近い。故に止めてと浦原に懇願するが、当然聞き入れず浦原は腰を動かすのだ。
やがてカクカクと互いの身体が震え出した。限界が近い。

「ヒィ…ヒィ、ッ…あ、ウグゥ」

腰を打ち付けながら、浦原が再びマユリへと口づけて来た。長く細い舌先がマユリの咥内で蛇のように蠢いた。そうしてマユリの白い尻に容赦無く突き立てられている蛇も。

「ウ…ウクゥ、ッ」

浦原の肩に掲げられている、マユリの白い足先がきゅうっと反り返る。浦原にて塞がれているマユリの口からくぐもった声が聞こえた。勢いよく白濁したモノが迸しり、マユリは浦原の腹へ、浦原はマユリのナカへと大量に精を注ぎ込んだ。
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夢中になって互いを求めた激しい時は過ぎ。
今浦原とマユリの二人は寝台にて互いの身体に寄り添い、蜜のような甘い時間を愉しんでいるようである。

マユリの薄い身体に未だ名残惜しむかのように指を這わせ、蒼髪に口づける浦原。やがて浦原は申し訳なさ気に、こう言うのだった。

「お誕生日、おめでとうございます。そういやアタシ何のプレゼントも用意出来なくて…恋人失格っスね」

「ム、別に…構わぬヨ。それに…プレゼントならもう貰っている。中々に貴重な体験をさせて貰ったからネ。なにしろこの私が猫と共に暮らすなど。今思えば随分と愉快な思い出だヨ。実に面白かった」

「ハハッ。そう言って頂けるとアタシも助かります。でも…今晩一緒に食事とか、どうです?せっかくの誕生日ですし」

「それもいいがネ」

「…ハイ?」

なにやら含んだ言い方をするマユリ。それを不思議そうに見遣る浦原。
そっとマユリの繊細な指が、浦原の金髪へと伸ばされる。浦原の柔らかい髪をくしゃりくしゃりと弄んだ後、マユリは目を細め、薄く微笑んだ。

「今日はずっと…傍にい給エ」
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[終.2012.03.22]
随分と長く掛かりましたねェ(ーー;)2P目迄はかなり前に出来てたんですけど(ホワイトデー小説と同時期位)。この後日談として、消えた『キスケ』に阿近が浦原だったと直感して、嫉妬したり…も考えてあったんですけどね。余裕が有ればまたf^ー^;
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