短編
□忘れなよ。
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「日向くん……」
いつも以上に優しい声色で話しかけてくる六道。しかし今のオレには、そんな事を気にしている余裕はない。
―潤目春臣
忌々しいアイツの顔が声が態度が脳内を無限ループして消ない。
「っ…?」
突然後ろから抱きしめられた。
「日向くん…、どうしたの?」
「何でもない…」
「嘘つき。」
「嘘じゃねえよっ」
怒鳴ったら急に涙がこぼれ落ちた。
「ほら、嘘つきだ。」
「…っさい……」
今日ばかりは、こいつの優しさに助けられた。
少しだけ…、少しだけ。
「日向くん、辛いときくらいオレを頼ってよ」
そう言われ胸の支えが一気に取れた気がした。
「じゃあ今日だけ、お前に甘えてやるよ」
「ふふ、嬉しいな」
六道の声はいつも以上に甘く、オレの鼓膜を優しく揺らした。
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七巻ネタ