短編
□不安なんだよ。
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「日向くん授業始まるよ?」
「ああ、先行ってろ」
六道(小)が部屋を小走りで出て行った。
ふと、俺は考えた。
あいつ、六道(大)にとって一番大切なものは何だろう。
六道黄葉か、それともヤマか?
いつも軽薄に「好きだ、好きだ」と抱きついたり、キスをせがんできたり。
結構天然なところがあるから、あれは素なのかもしれない。
もしくは、深い意味のない只のスキンシップなのかもしれない。
だから特別な愛情表現とかじゃないんだろうな。
そりゃ、俺はあいつに対して酷い態度をとっているから嫌われたって文句は言えない。
好きなのに好きと言えないというのは、もどかしいものだ。
本当は、もっと六道に触れられたい。
好きと言われたい。
自分の口から、好きと伝えたいんだ。
突然甘え始めたら、あいつはどんな反応をするだろう。
少し興味はあるが、俺には、そんな勇気がない。だから、今の関係が一番いいのだ。と自分に言い聞かせ部屋を後にした。
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