短編
□変、変、変
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後悔しているさ。
自分が言うのもなんだけど、まさか目の前の男がこんな変態だったなんて。
話を戻すと、オレは今、潤目春臣と名乗る男子生徒の部屋に連れ込まれている。
なんでも、彼はオレと黄葉くんについて調べているらしい。
だから、オレは廊下で彼とすれ違った時に声をかけられたのだろう。
彼の口車に乗せられ、前述の状況に至る。
「ほら、六道くん」
何故か彼の部屋のベッドの上。
押し倒され迫ってくる見知らぬ顔に
「君が何を思ってるかは知らないけど、オレは日向くんが」
「日向日向日向日向…みんな五月蝿いよ…」
彼が漏らす怒気のこもった呟きに言葉が遮られた。
それと同時に、彼の容姿が見覚えのある姿に『変』わった。
「!?」
「これならどう?どこからどう見ても君が好きなあいつでしょ?」
目の前にある顔は自分が誰より愛おしく思っている存在である、日向三十郎の顔だった。
「ね、これならいいでしょう?」
「…気安く日向くんの顔にならないでくれる?」
睨みつけ少し低めの声でそう言えば、少し顔をしかめた潤目春臣。
しかし彼は此方の様子はお構いなしにどんどん迫ってくる。
「僕さ、君のこと好きになっちゃったんだ」
耳元で囁かれる、日向くんなら絶対言わない台詞。
ときめいたりなんてしないわけで。
「オレは君を好きにはなれない」
「日向の顔してるだけじゃダメなの?」
「当たり前だろ?」
「…ふふ」
不敵な笑みをこぼした彼は、こちらの言葉を完全に無視し形の良い、しかし彼のものではない唇でキスを落としてきた。
その瞬間言いようのない嫌悪感と共に途轍もない吐き気に襲われた。
唇の感触は日向くんのものに変わりなかった。でも、何かが違う。
「ホント、やめてくれない…?あまり怒りたくないんだけど」
「別に構わないよ?怒るところも、観察したいしね」
気持ちの悪い笑みを顔に貼り付け、感情のこもっていない声で喋る。
彼に何をしても無駄だと思った。