短編
□『すべてを魅了する方』
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インド神話で、『クリシュナ』は“全てを魅了する方”といわれている。
というわけで、いまオレの視線の先にいる自称クリシュナ様を改めて観察、考察してみることにする。
まず容姿。
オレよりも何pか高い身長。
細く長い、しかし程よく筋肉のついた手足。
髪は黒くサラリと艶やかで、指通りがよさそうだ。
そしてあの整った顔立ち。
どこぞのアイドルグループのメンバーのように見えても可笑しくないだろう。
イコール。六道(大)の容姿は、悔しいが非の打ち所がないほどに美しい。
アイツがあのデカい剣を振るう姿は本当に格好いいと思う。
あの顔が優しい表情をすると、胸がぎゅっと締め付けられる。
男に対しても、このような感情を抱かせてしまうあのイケメンフェイスは、何度も言うが本当に美しいということだ。
次は性格だ。
基本的に天然ボケ。
オレと話をかみ合わせる気がないのか、アイツとマトモな会話をした覚えがない。
大切なモノのことになると、目の前が見えなくなるようなところがある。
―他人を平気で傷つけるところが。
性格については、まだ靄のかかったところがあり何とも言い難い。
まぁ、何だ…、悪い奴じゃないっていうことだ。
「ねえ日向くん?」
「なんだ?」
気がつかなかった、いつの間にか六道がオレの目の前にいたのだ。
「やっぱ日向くん大好き」
という言葉と同時に、オレの体は六道の胸の中へと入ってしまう。
―恥ずかしいこと簡単にしやがる…。
こう、優しく抱きしめられてしまうと、抵抗するのが惜しくなってしまう。
“全てを魅了する方”
ああ、そうか…。
オレもコイツに魅了されちまったのか。