短編
□欠陥品
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本当は全然平気じゃない。
蝕によって食い尽くされていった何も知らない新入生たち。
オレの目の前で血を大量に流して死んでいくんだ。
姉貴からさんざん聞かされていたし、覚悟も決めていた。でも、実際体験すると自分の脆さは隠せない程に酷なものだった。
「ぅ…うぇっ、かはっ…ゲホ、ゲホ…」
思い出すとすぐに戻してしまう。胃液を出すのは流石に堪えるから、仕方なく食事はとってはいるが殆ど意味がない。
六道たちの前では強気な態度で振る舞っているけど、かなり無理してる。
そんな弱さを誰かに見せたら、多分オレはもうお終いだと思う。
理由なんかない、ただの直感だ。
姉貴は楢鹿を卒業して、お偉いさんになったけど、血が繋がっていようと所詮他人なんだ。
オレは姉貴みたいにはなれない。
いつか襤褸が出る。
だからオレは欠陥品のままなんだ。