短編

□欠陥品
1ページ/1ページ



 本当は全然平気じゃない。

蝕によって食い尽くされていった何も知らない新入生たち。

オレの目の前で血を大量に流して死んでいくんだ。


姉貴からさんざん聞かされていたし、覚悟も決めていた。でも、実際体験すると自分の脆さは隠せない程に酷なものだった。


「ぅ…うぇっ、かはっ…ゲホ、ゲホ…」


思い出すとすぐに戻してしまう。胃液を出すのは流石に堪えるから、仕方なく食事はとってはいるが殆ど意味がない。


六道たちの前では強気な態度で振る舞っているけど、かなり無理してる。

そんな弱さを誰かに見せたら、多分オレはもうお終いだと思う。
理由なんかない、ただの直感だ。




姉貴は楢鹿を卒業して、お偉いさんになったけど、血が繋がっていようと所詮他人なんだ。


オレは姉貴みたいにはなれない。


いつか襤褸が出る。


 だからオレは欠陥品のままなんだ。



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ