短編

□好きと嫌いの境界線
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 蝕の後、日向とすれ違った。珍しく1人だったあいつを、ぼくは何故か呼び止めた。

「君はムードっていう言葉を知らないの?」

「お前相手にムードもへったくれもあるか」


 お互い悪口だけは次々出てくる。


「こっち向かないの?」

「そのにやけ面やめるってんなら向いてやらなくもないぜ?」

「人の顔にケチ付けるなんて、自分の顔に相当な自信を持っているみたいだね」


 昔からいけ好かない奴だと思っていた。

あいつの何もかもが依怙贔屓で出来ているんだ。
実力なんてないくせに、ぼくより上を行くのだ。
それが許せない、許したくない。


「俺4組じゃなくて本当によかった」

「君が居なかったら1組でもよかったよ」


 こんなやつ居なければよかった、そう思っている筈なのに何故か目で追ってしまう。

 彼を悪く言うのなんて慣れていた筈だったのに、さっきから胸が締め付けられるように苦しい。

この感情のような何かは、どこから生まれ、どこで消えてくれるのか。


先ず、何故呼び止めたのか。


 わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない、わからない


 ぼくをこんなにも悩ませる原因でもある日向三十郎。


 この正体を、本には書いてあるだろうか。




―――――

久しぶりの潤日

潤目さんは日向くんが好きなんのに、昔から嫌な奴だと思ってたから認めたくなかったらいい。


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