短編

□わかってるから
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「寒い……」

 季節はもう冬へと移ろうとしている。この時期は突然の気候変動の影響で風邪を引きやすくなる。
外はまだ暗く、起きるには早すぎる時間帯だ。
当然、ルームメイトはぐっすりと眠りに就いているわけで。

 そのちっこい体を見ていると、

「やっ、日向くん」

「うひぁ」

 このタイミングで何故こいつが。

「目が犯罪者のものだったよ」

「何がだよ」

「黄葉くんの危機だと思ってね」

「何で俺がこいつを襲う流れなんだよ」

ベッドに六道黄葉の姿はなく、その代わりにデカい方の六道が目の前に立っていた。


「寒いよね」

「そうだな」

「風邪引くよ?」

「お前もな」


続かない会話と暗い室内は、寒い冬を余計に冷たいものにしていく。


「夜ってさ、なんか寂しいよな」

「いきなりどうしたの?」

「なんとなく思っただけ…、お前まだそのままでいるつもりか?」

「もう少し、ね」

刹那、体が温かいものに包まれる感覚を覚えた。それは人肌の、柔らかなものだった。


「寒いから、もう少しこうしてる」

「ふ、布団入れよ」

「もう冷えちゃった…。日向くん、温かい」

一瞬にして体が熱を帯びる。部屋の寒さなど感じさせない程に。

「今日は日向くんに甘えよう…」

「…しょうがないな」



―――――

(眠れぬ楢鹿の日向)


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