短編
□変える
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「ねえ、日向」
誰かに呼ばれた。
自分のことを名字の呼び捨てで呼ぶのは袴田か潤目ぐらいだが、室内にその2人はいない。
この部屋にはオレと六道のみだから今のは六道か。
…でも、いつも「日向くん」と呼ぶ六道が何故「日向」と呼び捨て?
「それとも、『三十郎』のほうがいい?
うん、三十郎にしよう」
何自問自答してやがんだこのアホは。
全くもって状況が読めないぞ。こいつ大丈夫か?何を思って突然呼び方を変えてみたのか、そこから説明してもらいたい。
「お前六道、だよな?なんか変だぞ?」
「ひっどいなあ、気持ち悪いだなんて」
「そこまで言ってねーよ。
…潤目が『変』身してるわけじゃ」
「ないよ」
まあ同級生だし呼び捨て、不自然ではないけど。突然変わったらびっくりするよな、やっぱり。
「呼び捨てとか柄じゃないかなあ」
「別に今更変えるもんでもないだろ?」
「まあ、そうなんだけどねー」
「なんだよ?」
「あのねー、もうちょっと距離縮めたいなあ、なんて」
「一方的に詰め寄られても困るぞ、こっちは」
「だよね、言うと思ったー」
「…もし詰め寄って来るなら、」
「なら?」
「詰め寄られた分だけ引くからな、オレは」
「何でマグネットみたいなの!?酷いよ日向くん!」
「!」
六道の台詞に思わず笑ってしまった。
「結局“くん”付けてんじゃん」
「あ…」
なんでも習慣になっちゃえば簡単には変えられないんだよな。
そう心中で思い、六道をからかう作業に戻った。
―――――
寄れば引くのマグネット的無限ループが六日のデフォルトだよね。
とりあえず日向も六様のことちゃんと好きです。