短編
□襟足3cm
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髪を切った。
理由はない。
なんとなく、切った。
重力に逆らうことなく落ちていく緑色の髪。
いらなくなった赤い紐は、机の中にしまった。
軽くなった頭で教室に出向くと、比良坂に声をかけられた。
「あ、髪短くなってる!似合ってるよ」
人懐っこい笑顔でそう言った比良坂は、クラスメートに呼ばれパタパタと走っていった。
髪を切って1日。
いろんなやつに髪について話しかけられた。
ミノに至っては、「あ、昔の三十だ、また花束くれんの?」。一発かまそうとしたがノアに止められた。
そういえば、デカい方の六道にまだ会ってなかったっけ。
部屋のドアを開けると、その先にいた六道(大)がいつもの笑みを浮かべてこっちを見ている。一瞬、表情というものがやつの顔面から消えた気がしなくもないが。
不意に挙げられた六道の手。それがオレの頭に乗せられた。
「日向くん」
六道の意外と大きな手で優しく撫でられる。
「なんだよ」
やんわり微笑む六道。
頭上の手はゆっくり動き、次は頬に添えられた。
「おい、なんなんだよさっきから…。
なんか、言えよ…」
何も答えない六道は、ただただ微笑んでいる。
5分経った今も尚頭から離れないあの笑み、真意は測れない。
―――――
ミノの言葉を聞いてたとかいう設定で。
(オレの知ってる日向くんじゃない。)っていう病み気味六様。